5.ADHDとはどんな状態なのか?

ADHDの人とPDD(広汎性発達障害・アスペルガー症候群)の人とはどんな症状の違いがあるのか以下にまとめました。

ADHDの人の場合は、周囲をあまり考慮せずに自分の「感情」をストレートに噴出させます。また、情報を読み違えたときには、大変混乱します。

あるいはそれまでの習慣から、相手に自分を表現することが下手です。「我慢」を積み重ね、その結果、耐え切れなくなることもあります。

PDD(広汎性発達障害)では、近くや認知の歪みにより、物事の要素(部分)に瞬間的に反応してしまうことがあります。

日常的に多いのが、急な予定変更や予想外の出来事に対応できずに、癇癪やパニックを起こすことです。要するに状況判断、ある物事に関してこだわりを持つのです。落ち着きのなさ、衝動性、不注意などの特徴がADHDとはよく似ています。

しかし、自閉症やアスペルガー症候群を含むPDDの症状を持っている場合は、ADHDとは診断しません。

ADHDの特徴は、落ち着きがない、不注意、衝動性の三つです。

多動である、整理整頓ができない、忘れ物が多い、集中力がない、簡単なミスが多い、対人関係に問題があるなどの症状があります。また、友達関係がうまくいかない、パニックを起こすなどの問題を抱える子どももいます。

男女差として、女児のほうが言語力や
自己規制が高く、母親からは不注意を「ぼんやり」「気がきかない」として理解され、ADHDの落ち着きの無さが理解してもらえません。多動でかつ衝動的なほうは男児に多く、女児の三倍の頻度で認められます。

女性のADHDの場合、問題になるのが母親の葛藤なのです。母親としては、「娘には、きちんとした女性になってほしい」という希望があります。古風な言い方ですと良妻賢母、すなわちパーフェクトな女性を望んでしまうわけです。

そう望みながらも、同時にこの関係の中での勝者は母親であり、暗黙のうちに、「母親がいなければ、あなたは何もできない」というメッセージも日常の行為の中に織り交ぜられていきます。

結果として、社会性を育てることとは異なった厳しさ(支配)の中で、自我に気付かないまま、娘は育てられてしまいます。

世の中ではときに、一卵性母娘という言い方もあるようですが。母親の側からすると、思うように育った娘の存在こそが、社会に対してのあるいは夫やその家族に対しての、母親の存在位意義になることもしばしばなのです。

娘の側からしますと、気がついたときには周囲が女性として一番と表面上認めている相手に抵抗できるすべもなく、諦め、打ちのめされてしまうわけです。

その結果、トラウマとしてのうつ状態をつくります。ほかに、問題点として家庭内でのDV(ドメスティック・バイオレンス/夫婦の暴力行為)も多いといわれています。

ADHDの依存症として、不安障害、気分障害(うつ気分変調)も比較的多く認められ、ADHDとうつ病の併存も多く認めます。

家族機能の問題(家庭内暴力、アルコール依存症、両親の精神疾患)などが併存した場合には、反抗挑戦性障害、行為障害を認めることが多くあります。

併存症として学習障害があります。ディスレキシア(失語症、難読症、読字障害など)の合併が60%ぐらいといわれています。特にディスレキシアを有する不注意優勢型は、多動がないタイプなので、ADHDであることが気づかれないこともあります。この場合、コンサータが有効です。

このような子どもの場合、クラス全員に対して話している教師の声が他人事のように聞こえ、外見的にはボーッとして見えます。

しかし、一対一、もしくは少人数の指導では理解をしていくことができる場合も見られます。症状としては、言い間違え・聞き返し・読み間違い、書き間違いなどがあります。

ADHDと間違えられる疾患として、小児・青年期のうつ病があります。これは、成人のうつ病とは異なります。

被刺激性の亢進、無鉄砲な行動が主症状となり、いわゆる「キレる」という状態になることから、うつ病と気付かれないことも多々あります。

感情の亢進と低下が短期間に交互に出現します。説明できない被刺激性の亢進、身体症状が特徴であり、うつ状態の診断が遅れると、自殺などを含めた不幸な結果になることもあるため、注意深い診療を要します。

この場合には抗うつ剤(SSRI・SNRI)を用いた治療を早期から的確に行うことが必要です。治療効果が上がらない場合には、家族機能の問題、双極性障害(躁うつ病)も考慮しなければなりません。

次は『ADHDへの対応のしかたを知る』