6.ADHDへの対応のしかたを知る

ADHDの人は、子どもでなくても「褒められたい」という気持ちが強いようです。

ADHDの人は、そそっかしかったり、集中力に欠けていたり、計画性も欠いていますから、行動を起こしても周囲の状況を十分把握できず、結局反発を招くことが多くなってしまいます。それが度重なると、何をするにもやる気がうせてしまうのです。ですから、上手にほめていただきたいと思います。

日本人にとって褒めることは、本当に難しい行為です。褒め言葉が欧米に比べて著しく貧弱なことからもわかります。日頃から、その子どものオリジナリティーを活かした部分に焦点を当てた褒め言葉のいくつかを、用意されることをお勧めします。

「まず適切にほめる。次に、うまくいかなかった部分についてひとつだけ指摘する」この順番を間違えると、子どものこころは遠のいてしまいます。

そして、指摘するのはひとつだけです。多くを覚えられるようでしたら、そのような事態にはなりませんから。

このことを、親は何年にもわたって子どもに対して日常の中で行っていけば、必ず良い方向への変化を見てとれることでしょう。

いったん功を奏すれば、どうすればいいのかというコツを掴むことができます。うまくいくときもありますが、子どもは成長の変化によりこころの複雑さを増していますから、親のほうもそのスキルにモデルチェンジを施していく必要があります。

この「ほめる」ことで親子関係の改善をし、子どもの不適切な行動を減らしていくことを意識的に行うのかが、ペアレントトレーニングです。

その他、体で覚える、すなわちパターン化をしておくことも必要かもしれません。ものを片付けるべき場所に、写真や絵を描いておく。例えば、車を運転する時に最初は音楽を聴きながら車の運転はできませんが、しばらく慣れてくればいちいちの順番を覚えなくても、できるようになります。絵や写真を見て行動することはワーキングメモリーの少ないADHDの人には、負担が少なくて済みますし、きちんとできるようになるので有効です。

このような子どもに対して、親がどのように接するか、ペアレントトレーニング的に考えてみましょう。

多感な成長期を褒められて過ごした子どもと、自尊心が下がってしまった状態で大人になった場合とではどう違うでしょうか?

それは、成長期(自我を意識したとき)に、他者とは違う自分を守り、どれだけ大切にできるかが鍵になります。

どのような子どもであれ、親は子どもの困難の多くに寄り添い、慈しむこと。そのことが親の使命だと思うのです。

重い障害を持ち、社会から必要とされないと思われる子どもの場合には、「だからこそ」親が、精神的に見捨てることをしてはいけないと思います。

そして社会は、そういう家族を支えなければなりません。

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