心と脳の密接な関係

人間はだれしも、食欲、性欲、睡眠欲、集団欲といった、動物の本能的な欲求をもっています。動物と違うのは、そうした欲求に、建設的な形で対処しようとする心の部分をもっていることです。その心の部分が、より高度な知性や理性、創造性などの精神活動を生み出し、それによって心身のバランスを保とうとします。

こうした心の機能のうち、本能的な欲求や原始的な感情は古い皮質である大脳辺縁系(旧皮質)が、知性などの高度な精神活動は新しい皮質である大脳皮質(新皮質)が、それぞれつかさどっていることが明らかにされつつあります。このように、こころは大脳と密接に関係しているといえます。

一方で、心は、周囲の環境からも大きな影響を受けます。とくに、幼少期の体験(教育環境など)は、人格形成に深くかかわると考えられています。

したがって、もって生まれた脳の機能(遺伝因子)に、教育環境や心的外傷(トラウマ)、ストレスなど(環境因子)の影響が加わって、心の病は生じてくるということができます。

ただ、アルツハイマー病や脳性麻痺のように、大脳の解剖学的病変によって起こる器質的な脳の病気と違い、大脳の機能的疾患である心の病については、どこまでが正常で、どこからが異常なのか、明確には境界線を引けないという問題があります。

また、心の病にかかっていても、本人に病気であるという認識(病識)や、病気であるという感じすらない場合もあり、これらのことが、心の病の発見を遅らせてしまい、治療を難しくしてしまうケースが少なくありません。

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