脳血管性認知症とはどのような病気か?

脳血管障害が原因で生じる認知症

脳血管性認知症は、脳血管障害が原因で生じてくる認知症を総称するものです。脳梗塞や脳出血を何回か繰り返すと、脳の機能が低下して認知症になります。たとえば、3年前に脳梗塞が出現しけいどの右半身麻痺を起こした患者さんが、脳梗塞の再発によって運動障害の増悪とともにとんちんかんな行動がみられるようになった場合、脳血管性認知症の可能性が考えられます。

脳血管性認知症の特徴

アルツハイマー病では物忘れが主要な症状ですが、脳血管性認知症は、物忘れよりも日常の実行機能あるいは操作機能の障害が目立つことが特徴です。実行機能とは、日常生活に必要な一連の動作をスムーズに行う機能を指します。たとえば、ワイシャツを着るときには、まず裏表を確認、袖に腕を通す、ボタンを上から順番にとめる、袖のボタンをとめるといった一連の動作を迷うことなく行う行動に当たります。

脳血管性認知症になると、ワイシャツを裏返しに着てしまう、ボタンのとめ方が分からない、ワイシャツの着方が分からないなど、今まで何の苦労もなくできていたことができなくなるのです。

また、施行の緩慢化も特徴のひとつです。脳血管性認知症では、知識が失われているのではなく、脳内の知識の貯蔵校に到達し、そこから知識を引き出してくるまでに時間がかかるのです。そのため、脳血管性認知症の患者さんと接するときには、患者さんが行動するまであるいは反応するまで十分な時間を待ってあげることが原則です。周囲の人々が辛抱強く待ってあげると、脳血管性認知症の患者さんは、色々なことができることに気付きます。

自発性の低下や意欲の減退、周囲への関心の低下もしばしば見られる症状です。脳血管性認知症の患者さんには、アルツハイマー病以上に周囲からの積極的な働きかけが求められるのです。怒りっぽい、涙もろい、些細な事で大声をあげるなどの感情障害もしばしばみられます。

脳血管性認知症にならないために気をつけること

脳血管性認知症は、脳梗塞や脳出血が原因で生じます。脳血管性認知症にならないためには、脳梗塞や脳出血を予防することです。脳梗塞は、高血圧や糖尿病、高脂血症、心臓疾患、過剰な飲酒や喫煙などが原因になって出現してきます。脳出血の最大の危険因子は高血圧です。これらの危険因子を若い時からしっかり治療する、あるいはコントロールすることが大切です。生活習慣病の予防あるいは治療が脳血管性認知症の予防なのです。

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