認知症とはどのような病気か?

物忘れと認知症は違う

私たちは、学校や仕事、社会、家庭など多くの環境からいろいろな知識や技術を習得し日常生活を営んでいます。認知症と判断するための第一の条件は、この知識や技術が何らかの原因によって低下あるいは損なわれてくることです。どんなに物忘れがひどくても、それによって日常生活に支障がみられない場合には認知症と判断することはできないのです。

認知症と判断するための第二の条件は、低下してきた知識や技術によって社会生活や家庭生活に重大な支障をきたすことです。たとえば、現役の銀行員がお金の計算をできなくなった、主婦が今までできていた料理をつくれなくなってきた、洗濯機の使い方がわからないときなどに認知症の可能性を考えます。

意識がはっきりしていることも認知症の判断には必要です。意識が混濁していると、認知機能と呼ばれる脳の機能を評価することができないからです。

以前は、認知症は治らない、不可逆的で進行するものと考えられていましたが、現在の考え方では、早期の診断、適切な治療によって治すことが可能な認知症もあり得るとされ、経過も進行、不変、改善のいずれもみられるとされています。

「痴呆」から「認知症」への名称変更

認知症は、以前は「痴呆」と呼ばれていました。しかし、痴呆は侮蔑的な表現であり実態を十分に表していないとの指摘から、2004年12月24日、厚生労働省から「認知症」への名称変更の通知がなされ、現在は、一部の医学的な表現を除いて「認知症」という呼称が一般化されています。

次ページは「物忘れには2つの種類がある」