抗認知症薬と向精神薬
高血圧や糖尿病などの他の疾患と同様に、認知症治療も薬物療法と非薬物療法の2つが柱となります。認知症は、神経細胞が壊れることが原因で生じる中核症状と、中核症状から派生する周辺症状に分けられます。
中核症状に対する薬剤(抗認知症薬)は、記憶障害や見当識障害などに対して有効性を示すことが期待されますが、現在、中核症状を治すあるいは改善する薬剤は存在しません。実用化されているアルツハイマー病に対する抗認知症薬は、アルツハイマー病の原因のひとつとして考えられている大脳皮質のアセチルコリン低下を補うコリンエステラーゼ阻害薬と、神経細胞の保護作用をもつメマンチン塩酸塩だけです。いずれもアルツハイマー病にみられる症状の進展を抑制する可能性をもつ薬剤にすぎません。
一方、周辺症状に対しては、向精神薬と呼ばれる薬剤が主として使用されています。向精神薬は精神神経系に作用するもので、抗精神病薬あるいは抗うつ薬、睡眠薬、抗てんかん薬などが含まれます。たとえば、周辺症状として頻繁にみられう物盗られ妄想に対しては、抗精神病薬を使用して妄想の軽減をはかります。
薬物療法と非薬物療法の併用が重要
認知症治療では、薬物療法よりも非薬物療法の占める割合がはるかに大きいのです。非薬物療法には、記憶・見当識訓練や認知リハビリテーション療法、音楽療法、回想法、動物介在療法などが含まれますが、実際に効果があるのか否かを含めて検討の余地が残されているものがほとんどです。さらに、実際に施行している施設が少ないこともあって、これらの非薬物療法を受ける機会は少ないのではないでしょうか。
現在の認知症治療は、公的介護サービスと仮定内での介護を組み合わせながら、適宜薬物療法を併用していくことが原則といえます。
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