幻覚や妄想、暴力行為に対する薬

幻覚や妄想、暴力行為を軽減させる薬

認知症患者さんを介護するうえで幻覚や妄想、とくに物盗られ妄想、暴力行為がみられると家族は困惑してしまうことが多いと思います。

幻覚や妄想、暴力行為がみられる患者さんに身体的な危険が迫るとき、あるいは介護する家族の精神的・身体的負担が大きいときには、薬物療法を試みることがあります。使用する薬剤としては、抗精神病薬と呼ばれる一群の薬剤を使用することが多いようです。

特におすすめなのは、比較的副作用の少ないリスペリドン(商品名:リスパダール)あるいはフマル酸クエチアピン(商品名:セロクエル)の使用です。リスペリドンは、錠剤以外に細粒や液剤も発売されているので、患者さんの状態に合わせた選択が可能です。いずれも少量の服薬で幻覚や妄想、暴力行為を軽減することができます。

しかし、注意してもらいたい点は、これらの薬剤によっても症状を完全に消失させることは不可能なことです。症状を完全に抑えようとして薬の量が増加すると、そうだが緩慢になる、手足のふるえがみられる、転びやすいなどの副作用が出やすくなります。

これらの抗精神病薬は、認知症にみられる幻覚や妄想などの精神症状に対して保険適応を取得していません。したがって、保険適応外投与にあたります。

また、高齢者に対する抗精神病薬の使用によって、死亡率がやや増加するとのデータが2005年に米国から出されました。そのため、認知症にみられる精神症状や行動障害に対して、これらの薬剤を使用する際には十分注意する必要があります。使用に際しては、主治医の先生とよく相談してください。

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