腸管出血性大腸菌の原因と症状

腸管出血性大腸菌とは

腸管出血性大腸菌(しょうかんしゅっけつせいだいちょうきん、英: Enterohemorrhagic Escherichia coli、EHEC)は、腸管炎や血便、腹痛を引き起こす細菌の一種です。EHECは、Enterohemorrhagic Escherichia coli O157:H7を含む一群の大腸菌の株であり、細菌が産生する毒素が症状を引き起こす原因とされています。EHEC感染は、未加熱または不適切に加熱された食品(特に肉類)を摂取したことが原因となることが多いです。感染症の症状は、下痢、腹痛、発熱、嘔吐、腎不全などがあり、重篤な症状が出ることもあります。適切な治療を受けない場合、EHEC感染症は死に至ることもあるため、早期の診断と治療が重要です。

腸管出血性大腸菌の症状

腸管出血性大腸菌(EHEC)感染症の症状は、一般的な腸管感染症と似ていますが、通常はより深刻で長期間持続する可能性があります。主な症状には以下が含まれます。
  • 下痢:通常は血便が混じり、軟便や水様便になります。下痢は突然始まり、軽度な場合は数日で終わることがありますが、重症の場合は2週間以上続くことがあります。
  • 腹痛:通常は腹部下部の痛みがありますが、腹痛は激しく、持続的であり、時には腰部にも及びます。
  • 発熱:通常は軽度で、38℃以下の範囲にとどまります。
  • 嘔吐:重症の場合には、嘔吐があります。
  • 腎不全:EHEC感染症の合併症として、腎不全を引き起こすことがあります。腎不全の症状には、体重減少、むくみ、尿の減少などが含まれます。

これらの症状が出た場合は、速やかに医師に相談し、適切な治療を受ける必要があります。

腸管出血性大腸菌の原因

腸管出血性大腸菌(EHEC)感染の主な原因は、EHEC細菌による感染です。EHECは、牛や豚などの動物の腸内に生息しており、感染者がその動物の排泄物(特に糞便)と接触することで感染が広がります。EHEC感染の主な原因は、以下の通りです。
  • 食品感染:生または不十分に調理された牛肉、豚肉、羊肉、鶏肉、生の野菜や果物などの食品から感染することがあります。EHECは、加熱によって死滅しないため、肉類は完全に加熱してから食べるようにしてください。
  • 人から人への感染:EHEC感染者の糞便から、感染者が手を洗わずにトイレから出た場合などに、他の人に感染することがあります。したがって、手洗いの重要性を忘れずに、特にトイレを使用後には手を十分に洗ってください。

EHEC感染の予防策としては、十分に加熱された食品を摂取し、手洗いを習慣化することが重要です。また、食品を調理する前に十分に手を洗い、食品を取り扱う際には清潔な環境で行うことも大切です。

腸管出血性大腸菌の治療法

腸管出血性大腸菌(EHEC)感染の治療法は、症状の重症度に応じて異なります。一般的には、以下のような治療が行われます。
  • 症状が軽度の場合:通常は自宅での休養と、十分な水分補給を行います。下痢が続く場合は、止瀉薬の使用は避け、水分補給により脱水症状を予防するようにしましょう。
  • 症状が重度の場合:入院して、静脈内輸液や栄養補給などの治療を行います。重度の下痢がある場合には、腸内環境を整える目的で、乳酸菌剤や腸内細菌叢再生剤などが投与されることもあります。
  • 腎不全の場合:腎不全が進行している場合には、血液透析や腹膜透析などの治療が必要となります。

抗生物質は、EHEC感染の治療には使用されません。EHEC細菌が産生する毒素は、抗生物質の使用によってより多く放出されるため、症状を悪化させることがあるためです。

EHEC感染に対する最も重要な予防策は、食品安全に対する意識を高め、加熱処理を十分に行った食品を摂取することです。また、手洗いを徹底することも大切です。感染症の症状がある場合には、速やかに医師に相談し、適切な治療を受けるようにしましょう。

腸管出血性大腸菌と診断されたら

腸管出血性大腸菌(EHEC)感染が疑われる場合は、速やかに医師に相談しましょう。医師は、症状や検査結果に基づいて、EHEC感染の診断を確定するために以下のような検査を行うことがあります。
  • 糞便検査:EHEC細菌のDNAを検出するPCR検査や、EHECの毒素を検出するELISA検査などがあります。
  • 血液検査:溶血性貧血や血小板減少症など、EHEC感染によって引き起こされる合併症を確認するために、血液検査を行うことがあります。
  • 尿検査:腎不全を引き起こすEHEC感染の合併症を確認するために、尿検査を行うことがあります。

診断が確定した場合は、医師によって適切な治療が行われます。治療法については前の質問にも回答しましたが、軽症の場合は自宅での経過観察と水分補給が主な治療となります。一方、重症の場合は入院して治療を行うことが必要となります。治療の選択は個人差があるため、医師の指示に従って適切な治療を受けるようにしましょう。また、感染症の拡散を防止するため、医師からの指示に従い、感染症対策に協力することも大切です。

腸管出血性大腸菌の予防法

腸管出血性大腸菌(EHEC)感染の予防には、以下のような対策が有効です。
  1. 良好な衛生習慣の確保:手洗いや食器の洗浄など、衛生状態の維持が重要です。特に、トイレ後や食事前など、手を洗うタイミングを意識し、十分な手洗いを行いましょう。
  2. 食品の適切な調理:肉や野菜などの食材を十分に加熱して、中心部まで加熱することで、EHEC菌を含む細菌を殺菌することができます。また、生肉と調理済みの食品を分けて保存することも大切です。
  3. 安全な水の利用:EHEC菌を含む汚染された水を飲まないようにするため、飲料水は浄水器を通すか、ボイルしてから利用しましょう。
  4. 牧場や動物園での接触時には注意する:家畜やペット、動物園での動物に接触した際には、手洗いを行い、感染症の拡散を防止するようにしましょう。
  5. 感染が疑われる場合には速やかに医療機関を受診する:発熱、下痢、腹痛などの症状がある場合には、速やかに医療機関を受診し、感染症の早期発見・早期治療を行うことが大切です。

これらの対策を実践することで、EHEC感染のリスクを減らすことができます。