6.「視覚優位」と「聴覚優位」

「一番小さい頃の自分のことを思い出してみましょう」というと、だいたい誰もが三歳前後の時期のことが頭の中に浮かんでくると思います。

もっと小さい頃のことも記憶に残っているはずなのに、なぜ思い出せないのでしょうか。

記憶をよみがえらせるということは、膨大な貯蔵された記憶の中から、ある情報を引き出すことです。乳児期から幼児期早期の記憶は、言語や言語的記憶が十分に成熟していませんので、言葉としては記憶できません。ですから、視覚的(映像的)な記憶になるわけです。

まるで、一枚の写真を見るように、ときには映画を見るように、連続した画像として思い出されなければ、記憶にのぼってくることはないのです。

そのような記憶形態が強い人は、周囲の人にとっては細かいなんでもないことが、原記憶となり、ときにはつらく悲しい出来事として、まるでフラッシュバックのように浮かんでくることがあります。

その記憶はもちろん、言語的な意味はありません。しかし、後に何度も思い出すうちに言語的な思いや感情を付け加え、あたかもそのときのことをそのように考えていたかのように誤認することがあります。まるで、台詞のように、トラウマのように・・・。

このように、あとから言葉の情報としてさまざまな思いや感情をつけることが自然にできてしまう子どもあるいは大人たちは、「視覚優位の人」といえます。

視覚的に記憶し、考え、理解する人たちは、興味の幅は広くありません。言葉は曖昧なものですが、視覚的なイメージは曖昧になるはずがありません。このように考える人は、自分がこうと思ったら譲らない、好きなものは好き、嫌いなものは嫌いと思い込む傾向があります。

視覚優位の人は、写真家、イラストレーターなどの芸術、ファッション関係の人に多く見受けられます。

反対に聴覚的な、言葉に頼った記憶の持ち主は、乳児期や幼児期早期にまで記憶をたどることができません。このように聴覚的(言葉として)記憶し、物ごとを考え、理解する子どもあるいは大人は「聴覚優位の人」といえます。

彼らは、興味の対象が広く柔軟です。しかし、興味は自分が納得できなければ長続きはせず、途中でまったく違ったことに興味を示し、周囲の人を惑わせてしまいます。

しかし、その人の仲では、興味の対象が複雑な迷路のように首尾一貫してつながっています。

このような聴覚優位の人は雑誌や新聞などのマスコミ関係、科学者、臨床医などに多く見受けられます。
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