3.子育ては子どもを見ることから始まります

新生児は、生後すぐから視覚的に顔、特に目を注意を払うことにより、母親を理解することが可能であるといわれています。このことは、さまざまな実験結果から知られています。

人間は他人から見られていること、すなわち視線を感じることから、自分を認識するようになります。

しかし、このような前提が実現するための必要条件として、視線には、相手の思い、感情などが含まれたメッセージが込められていなければなりません。

すなわち、自分と無関係な動物に見つめられているのとは違うわけです。その場合、人は恐れだけを感じます。そのような付随した感情を体験し、自分の中に摂り入れることから、視線を感じる相手を同じ仲間であると感じるようになります。

そのあとから、見つめようとする意欲が表れ、目止めを合わせるようになるのです。

その結果として、乳児は母親の視線であることに気付き、母親をトータルな存在として感じるようになり、結果として、指さしの方向を見るようになって自分からの要求の指さし行動が現れるわけです。

自閉症・アスペルガー症候群の子どもでは、このように人から見られていることから導き出される情動のゆらぎが起こらないために、自己認識の始まりが認められないか、あるいは遅れます。

この現象は『ふしぎの国のアリス』でアリスが観ているスペードの女王に似ています。見られているように思っていても、情動がゆらぎません。情動がゆらがないことが、目を合わせない理由だとも考えられています。
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