4)尿酸値とプリン体の関係

高尿酸血症の人の20%に痛風の発作が起きる

痛風発作は体内の過剰な尿酸が引き起こします。

さて、この尿酸とはどんな物質なのでしょうか。尿酸は白色・無味・無臭の物質で、私たち人間にとっては、細胞が壊れたり、エネルギーの代謝によって産生された廃棄物です。そして、人間の体内ではこれ以上分解できない物質で、腎臓から尿とともに排泄されます。

尿酸は水に溶けにくい物質でもあります。つまり溶解度が低いわけです。溶解度を超えて溶けきれない尿酸は尿酸ナトリウムとして結晶化します。さらに尿酸の溶解度は、溶かす液体(血液や尿)が酸性に傾いたり、温度が低くなるとさらに低下してしまいます。

尿酸を分解できないのは、ヒトやサルなどの高騰な霊長類と魚類、爬虫類の一部だけです。他の動物、イヌやウシなどは尿酸分解酵素を持っているため、尿酸は分解されてから体外に排泄されるので痛風にはなりません。

尿酸は老化や癌を防止する物質?

このように見ていくと、尿酸は体外に捨てられるものであり、また痛風発作の元凶となるものですから、人間にとって全く不要なものと決め付けたくなります。ところが、最近、霊長類が他の動物に比べて長寿であるのは、この尿酸が深く関与しているのではという説が出てきました。尿酸が老化や癌の原因である活性酸素を処理しているのではないかというわけです。いずれにせよ、尿酸にはどのような働きがあるかは、まだはっきりと分かってはいません。

尿酸という物質はプリン体からつくられる

尿酸の原料となるのはプリン体と呼ばれる物質で、プリン体は以下の3つのルートで作られます。

細胞の核にある核酸が分解してできるルート

核酸は遺伝子として働いたりタンパク質の合成などの重要な働きをしています。私たちの肉体を構成する細胞は常に新しい細胞が生まれ、古い細胞は死んで分解されるという新陳代謝を行っています。古い細胞が分解されるときにその一部である核酸も分解されてプリン体ができるのです。

エネルギー代謝の過程で生成されるルート

エネルギーのもとである高エネルギー物質ATPという物質が運動、反応、代謝など生命活動に使われるとADPに分解されます。通常ADPはリン酸という物質と結合して再びATPとなります。

ところが急激に、また治療にATPが使われるとADPがたくさん出来すぎるのでプリン体になって尿酸になります。

食品に含まれるプリン体が体内に入るルート

このため、かつてはプリン体を多く含んだ食品を痛風の患者さんは激しく制限されていました。しかし食物に含まれるプリン体は、腸内の最近によって分解されてしまうものもあるので、昔ほど厳しい食事療法は指導していません。しかし、プリン体を多く含んでいるレーバやイワシの干物などの多食は避けるべきでしょう。肥満は痛風の大きなリスクファクターになるので、カロリー制限を中心とした食事療法は、痛風治療の大きな柱であることは変わりありません。

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