「夜間の頻尿」は前立腺肥大症?セルフチェックと泌尿器科へ行くべき基準

「夜間の頻尿」とは、就寝後に排尿のために1回以上起きなければならない状態を指します。特に男性の場合、この症状は前立腺肥大症によって引き起こされている可能性が高いです。

1. 前立腺肥大症(BPH)とは

前立腺は膀胱のすぐ下にあり、尿道を取り囲んでいる臓器です。これが加齢とともに大きくなり(肥大し)、尿道を圧迫したり、膀胱を刺激したりすることで、様々な排尿トラブル(下部尿路症状)を引き起こします。

症状のメカニズム

  1. 圧迫(排尿障害):前立腺が肥大し尿道を締め付けるため、尿が出にくい(いきまないと出ない、勢いがない)などの症状が出ます。
  2. 刺激(蓄尿障害):前立腺が膀胱を刺激することで、膀胱が過敏になり、頻繁に尿意を感じる(頻尿、切迫感)などの症状が出ます。夜間頻尿はこの蓄尿障害の一つです。

2. セルフチェック:排尿に関する10のサイン

以下の症状が多く当てはまる場合、前立腺肥大症の可能性が高いと考えられます。

カテゴリー 症状 セルフチェック
蓄尿症状 夜間頻尿 就寝後、排尿のために2回以上起きてしまう。
日中の頻尿 日中に8回以上トイレに行く。
尿意切迫感 急に強い尿意を感じ、我慢するのが難しいことがある。
尿漏れ 尿意切迫感の後に、間に合わず漏らしてしまうことがある。
排尿症状 尿の勢い低下 尿の勢いが弱く、チョロチョロとしか出ない。
遷延性排尿 排尿の開始までに時間がかかる(いきまないと始まらない)。
腹圧排尿 お腹に力を入れないと尿が出ない。
排尿後症状 残尿感 排尿後も膀胱に尿が残っている感じがする。
排尿後滴下 排尿後に尿が垂れて、下着を汚してしまう。

3. 泌尿器科へ行くべき基準

夜間頻尿は睡眠の質を低下させ、転倒リスクにも繋がります。以下の状態に当てはまる場合は、放置せず泌尿器科を受診してください。

① 回数・頻度による基準

  • 夜間頻尿が2回以上:一般的に、夜間に2回以上起きると、睡眠の質が大きく低下すると言われます。生活に支障が出ている場合は受診しましょう。
  • 日中頻尿が8回以上:1日の排尿回数がこの基準を超え、ご自身で「多すぎる」と感じる場合。

② 重大な合併症リスクによる基準

以下の症状は、前立腺肥大症が進行し、腎臓に負担をかけたり、急性尿閉(尿がまったく出なくなる状態)を起こしたりする危険性を示しています。

  1. 急に尿が出なくなった(急性尿閉):これは救急性の高い症状です。膀胱に尿が溜まり破裂する危険があるため、直ちに病院へ向かってください。
  2. 強い残尿感が続く:残尿が多いと尿路感染症や膀胱結石の原因となり、腎機能にも影響を及ぼす可能性があります。
  3. 排尿時に痛みや血尿がある:炎症や他の病気の可能性も示唆されるため、早急な検査が必要です。

前立腺肥大症は、飲み薬で症状を改善できる場合が多く、早期に適切な治療を開始することが生活の質の維持に繋がります。