1. バセドウ病とは?その原因とメカニズム
バセドウ病は、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されることによって全身の代謝が異常に高まる「甲状腺機能亢進症」の代表的な疾患です。
原因:自己免疫の異常
バセドウ病の根本原因は、体の免疫システム(自己抗体)の異常です。
- TSH受容体抗体 (TRAb):本来、自分の体を守るはずの抗体が、甲状腺を刺激するホルモン(TSH)の受容体に誤って結合し、甲状腺を過剰に働かせてしまいます。
- その結果、甲状腺ホルモン(T3, T4)が血液中に大量に分泌され、全身の臓器がアクセルを踏みすぎた状態になります。
2. バセドウ病の「3大特徴」と初期症状
バセドウ病には、動悸、甲状腺の腫れ、眼球突出という「3大特徴」がありますが、初期には気づきにくい全身の症状として現れます。
| 症状のカテゴリー | 初期サインとメカニズム |
| 全身代謝 | 多汗、暑がりになる、異常な空腹感。常に体温が高い状態になる。 |
| 精神・神経 | イライラしやすい、落ち着きがない、手足の震え(特に指先)。自律神経が過剰に興奮している。 |
| 皮膚・毛髪 | 皮膚が湿って温かくなる、抜け毛が増える。 |
3. 重要なサインを見逃すな!脈拍と体重の変化チェック
全身の代謝が異常に上がるため、脈拍と体重には非常に顕著な変化が現れます。セルフチェックで特に注意すべきサインです。
① 脈拍(心臓)の変化
- 特徴:心臓が常に全力疾走しているような状態になり、安静時にも脈が異常に速くなります。
- セルフチェック:
- 安静時脈拍:リラックスした状態で手首の脈を測り、1分間に90回以上ある。
- 動悸:階段を上るなど軽い運動で息切れがひどい、または安静時にも動悸や胸の不快感を感じる。
- 不整脈:脈が速いだけでなく、時々飛んだり乱れたりする(心房細動のリスクが高まります)。
② 体重の変化
- 特徴:食事の量が増えて食欲があるにもかかわらず、体重が減少していきます。
- セルフチェック:
- 食欲増加と体重減少:普段より食べる量が増えている、または変わらないのに、数ヶ月で体重が意図せず数キログラム減少した。
- 消化器症状:腸の働きも過剰になり、下痢や排便回数の増加が見られる。
4. 早期発見のための受診の目安
上記のサインが複数当てはまり、特に安静時の脈が速い状態が続いている場合は、甲状腺機能の異常が疑われます。
- 受診すべき窓口:内分泌・代謝内科、または甲状腺専門クリニック
- 緊急性の高いサイン:高熱、激しい動悸、意識障害、筋力低下が起こる「甲状腺クリーゼ」は命に関わるため、直ちに救急病院を受診してください。
バセドウ病は適切な治療(薬物療法、手術、アイソトープ治療)でコントロールが可能な疾患です。早期に発見し、心臓への負担が増す前に治療を開始することが重要です。

