狭心症は、心臓に血液を送る冠動脈が動脈硬化などで狭くなり、心筋(心臓の筋肉)が一時的に酸素不足に陥ることで発症します。適切な対処を怠ると、血管が完全に詰まり心筋梗塞へと移行する危険な病気です。
1. 狭心症の初期症状と心筋梗塞への移行リスク
狭心症の症状は、心筋梗塞と似ていますが、持続時間に大きな違いがあります。
狭心症の初期症状
最も典型的な症状は、胸の痛みや圧迫感、締め付けられるような苦しさです。
| 症状の特徴 | 狭心症(安定狭心症) |
| 部位 | 胸の真ん中(みぞおちから胸の上部)、左胸。まれに歯、下あご、肩、左腕にも広がる(放散痛)。 |
| 持続時間 | 数分から15分程度で治まる。 |
| 誘因 | 運動、労作、階段昇降、寒冷、またはストレスなどが誘因となることが多い。 |
| 緩和 | 安静にしたり、ニトログリセリン(ニトロ)を使用することで症状が改善する。 |
心筋梗塞への移行リスク:「不安定狭心症」のサイン
これまで安定していた症状に変化が見られた場合、それは不安定狭心症と呼ばれ、心筋梗塞の一歩手前の非常に危険な状態です。
| 危険なサイン(心筋梗塞移行リスクが高い) |
| 発作の頻度が増えた(以前より発作の回数が増えた)。 |
| 発作の持続時間が長くなった(15分以上続くようになった)。 |
| 発作が軽い運動や安静時にも起こるようになった(特に夜間や早朝の安静時発作は「冠攣縮性狭心症」の可能性もある)。 |
| ニトロの効果が弱くなった、または効かなくなった。 |
心筋梗塞は、胸痛が20〜30分以上持続し、安静にしても治まらず、冷や汗、吐き気、意識障害などを伴うことが多いです。
2. 命を守るニトロ(ニトログリセリン)は「いつ使う」?
ニトログリセリン(ニトロペン舌下錠、ミオコールスプレーなど)は、冠動脈を拡張させ、心臓の負担を軽くする狭心症の救急薬です。
ニトロを使うべきタイミング
「胸痛(症状)のできるだけ早期」、つまり「いつもの狭心症の発作だ」と感じたら、症状が強くなるのを待たずにすぐ使用してください。早めに使う方が効果が高く、発作の時間を短くできます。
| 項目 | 使用時のポイントと注意点 |
| 使用方法 | 1錠を舌の下に入れて溶かす(舌下錠)。スプレータイプの場合は舌下に1噴霧。飲み込むと効果が薄れます。 |
| 体位 | 使用すると一時的に血圧が下がり、めまいや立ちくらみを起こすことがあるため、必ず座った状態(座位)で使用する。 |
| 効果時間 | 通常、1〜2分で効果が現れ始め、発作が和らぎます。 |
| 追加投与 | 5分ほど待っても効果が不十分な場合は、もう1錠(または1噴霧)追加が可能(合計2回までが推奨されることが多い)。 |
ニトロを使用しても症状が治まらない場合
1回の発作でニトロを2〜3回(医師の指示に従う)使用しても症状が治まらない場合や、発作が20分以上も続く場合は、心筋梗塞に移行している危険性が非常に高いです。
直ちに服用を中止し、迷わず119番通報で救急車を呼んでください。
狭心症は早めの診断と治療で、心筋梗塞への移行を防ぐことができる病気です。心当たりのある方は、一度医療機関(循環器内科)を受診し、血管の状態を詳しく調べてもらうことをお勧めします。
