食道がんは、初期には自覚症状がほとんどなく、進行してから症状が現れることが多いため、早期発見が極めて重要ながんです。
1. 食道がんの初期症状:「のどの違和感」と進行サイン
食道がんは、食道の壁の表面にできることが多いため、初期の段階では、食べ物が通るときの微妙な変化として自覚されることがあります。
| 段階 | 初期症状(見逃されやすいサイン) | 進行時の主な症状 |
| 超初期 | ① のどの違和感:食べ物が引っかかるような感じ、異物感、飲み込むときの軽い痛みや熱さを感じる。 | ⑤ 嚥下困難(飲み込みの障害):固形物だけでなく、やわらかいもの、最終的には水も通りにくくなる。 |
| 初期 | ② 胸の違和感:胸の奥が熱い、重い、しみるような感覚(逆流性食道炎と間違われやすい)。 | ⑥ 体重減少:食事摂取量が減ることに加え、がん細胞がエネルギーを消費するため、急速に体重が減る。 |
| 進行期 | ③ 嗄声(かすれ声):がんが進行し、声を出す神経(反回神経)を圧迫することで、声がかすれる。 | ⑦ 慢性の咳・血痰:気管や気管支にがんが浸潤し、咳が止まらなくなったり、血の混じった痰が出たりする。 |
| 進行期 | ④ 背中の痛み:がんが食道の壁を突き破り、背中側の神経を刺激することで持続的な痛みが生じる。 |
2. セルフチェック:ハイリスクな方のチェック項目
食道がんは、特に以下の生活習慣を持つ人に発生リスクが高いことが知られています。これらの習慣があり、上記のような「のどの違和感」や「胸の違和感」を感じた場合は、速やかに内視鏡検査(胃カメラ)の相談をしてください。
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喫煙:タバコを吸っている、または吸っていた。
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飲酒:日常的に飲酒量が多い。
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特に、飲酒後に顔が赤くなる(フラッシング反応)にもかかわらず飲酒を継続している。アルコールを分解する酵素の働きが弱く、発がんリスクが高まります。
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熱いものの摂取:熱いお茶やスープなどを好んで飲む習慣がある。
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食事の偏り:野菜や果物の摂取が少なく、栄養バランスが偏っている。
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既往歴:バレット食道(逆流性食道炎の慢性化)、頭頸部がんの治療歴がある。
3. 生存率と早期発見の重要性
食道がんは、早期に発見できれば治癒が十分に期待できますが、進行すると予後が厳しくなるがんです。
| 進行度(ステージ) | 5年相対生存率の目安(概算) | 治療法 |
| ステージ0(超早期) | 90%以上 | 内視鏡的切除(ESD/EMR) |
| ステージI(早期) | 70%〜80%程度 | 手術、化学放射線療法など |
| ステージIII(進行期) | 30%〜40%程度 | 手術+化学療法・放射線療法など |
| ステージIV(遠隔転移あり) | 10%未満 | 化学療法、緩和ケア |
医師の視点
早期の食道がんは、食道の内側のみに留まっており、胃カメラで切除することが可能です(ESD/EMR)。この段階では手術に比べて体への負担が非常に少なく、高い確率で完治を目指せます。「のどの違和感」は、身体からの初期の警告サインと考え、放置せずに消化器内科を受診することが、命を守る最良の行動です。
