【F.A.S.T.で今すぐチェック】脳梗塞の前兆と命を守るゴールデンタイム

脳梗塞は、脳の血管が詰まり、脳細胞に酸素や栄養が届かなくなることで生じる病気です。発症から治療開始までの時間が、後遺症の程度と生存率を決定づけます。

1. 脳梗塞の前兆サイン:F.A.S.T.チェック

脳梗塞の前兆は突然現れるのが特徴です。以下のF.A.S.T.(ファスト)と呼ばれるチェックリストは、脳卒中の典型的な症状を覚えて、迅速に行動するための世界的な指標です。

頭文字 項目 チェック方法 サイン(異常)
Face 顔の麻痺 「イー」の口の形をしてもらう 顔の片側がゆがむ、口角が上がらない。
Arm 腕の麻痺 両腕を前に突き出し、手のひらを上に向けて10秒キープしてもらう 片方の腕が下がる、または力が入らない。
Speech 言語障害 「今日は天気が良いです」などの簡単な文章を復唱してもらう ろれつが回らない、言葉が出ない、意味不明な会話になる。
Time 発症時間 上記の症状が始まった時間を記録する 時間が命。すぐに救急車(119番)を呼ぶ。

その他の前兆(一過性脳虚血発作 TIA)

上記の症状が数分から数十分で完全に消えてしまう場合を一過性脳虚血発作(TIA)と呼びます。「治ったから大丈夫」と放置せず、脳梗塞の前触れとして、すぐに病院を受診しなければなりません。

2. 命を守る4.5時間のゴールデンタイム

脳梗塞の治療において、発症から4.5時間以内は、詰まった血栓を溶かす血栓溶解療法(t-PA静脈注射)の適応となる可能性があり、その後の予後を大きく改善できる「ゴールデンタイム」と呼ばれます。

治療のメカニズム

  • t-PA(アルテプラーゼ)静脈注射:詰まった血栓を強力に溶かす薬を静脈から投与します。発症から4.5時間以内に投与できるかどうかが、治療成績を大きく左右します。

  • 血管内治療(血栓回収療法):大きな血管が詰まっている場合、カテーテルを挿入して直接血栓を回収する治療法です。こちらは発症から6〜8時間以内など、t-PAよりも時間が延長される場合がありますが、やはり早期実施が重要です。

命を守るための行動フロー

  1. F.A.S.T.に当てはまる症状が出たら発症時間を確認する。

  2. 迷わず、直ちに119番通報する。

  3. 救急隊員に「脳卒中のF.A.S.T.に該当する」ことと、「症状が出た正確な時間」を伝える。

救急車を待つ間に、絶対に症状が治るのを待ったり、自分で運転して病院に行ったりしないでください。 一刻も早く、t-PA療法が実施可能な専門病院(脳卒中センターなど)へ搬送されることが重要です。