ウェルニッケ脳症

ウェルニッケ脳症は、主にビタミンB1(チアミン)の欠乏によって引き起こされる深刻な脳の障害です。初期症状を見逃すと命に関わる可能性もあるため、早期発見と迅速な治療が極めて重要です。この記事では、ウェルニッケ脳症の原因・症状・治療法・予防法などをわかりやすく解説します。

ウェルニッケ脳症とは?

ウェルニッケ脳症(Wernicke encephalopathy)は、脳の特定部位に障害が起こる神経疾患で、急性に発症することが特徴です。特に慢性的なアルコール依存症患者や、消化管の手術後、長期の栄養不良状態にある人に多く見られます。

ウェルニッケ脳症は、早期に適切な治療を行えば回復が可能ですが、放置すると慢性化し、コルサコフ症候群(記憶障害)へ進行することがあります。

ウェルニッケ脳症の主な原因

この病気の最大の原因は、ビタミンB1の欠乏です。ビタミンB1は糖質をエネルギーに変えるために必要不可欠な栄養素であり、欠乏すると神経細胞が正常に機能できなくなります。

原因 詳細
慢性的なアルコール摂取 アルコールによってビタミンB1の吸収が阻害され、体内の貯蔵量も減少します。
長期間の絶食・栄養失調 消化器疾患や拒食症、がん患者などで栄養不足が続く場合。
胃や腸の手術後 胃切除やバイパス手術により、ビタミンB1の吸収が困難に。
重度のつわり(妊娠悪阻) 食事が取れずに栄養不足となり、ビタミンB1欠乏を招くケース。

ウェルニッケ脳症の主な症状

ウェルニッケ脳症の典型的な三徴候は以下の通りです。ただし、すべてが揃うとは限らず、1つだけしか現れない場合もあります。

  • 眼球運動障害(複視、眼振など)
  • 運動失調(歩行困難、ふらつき)
  • 意識障害(混乱、記憶障害、昏睡)

これらの症状は急激に進行することがあるため、異変を感じたらすぐに医療機関を受診する必要があります。

診断と治療方法

ウェルニッケ脳症は、臨床症状やMRI検査、ビタミンB1濃度の測定などを通じて診断されます。以下に代表的な診断・治療法をまとめました。

診断方法 説明
MRI(磁気共鳴画像) 視床、脳幹、小脳周辺に特有の異常が見られることがあります。
血液検査 ビタミンB1の血中濃度を確認。
症状の観察 三徴候の有無を確認し、臨床的に判断。

治療はビタミンB1の大量静脈投与が基本です。できる限り早く投与することで、症状の進行を抑えられます。治療が遅れると不可逆的な脳損傷につながる可能性があります。

予防と日常生活での注意点

ウェルニッケ脳症を予防するには、以下の点に注意しましょう。

  • バランスの取れた食事(特にビタミンB1を多く含む食品)
  • 長期間絶食しない、無理なダイエットをしない
  • アルコールを控える、または節度ある飲酒
  • 胃手術や慢性疾患の後は定期的にビタミン補給を受ける
ビタミンB1を多く含む食品 含有量(mg/100g)
豚肉(ヒレ) 0.9
玄米 0.41
大豆 0.83
のり・海藻 0.71
落花生 0.85

よくある質問(Q&A)

Q. ウェルニッケ脳症は治る病気ですか?

A. はい、早期にビタミンB1を適切に投与すれば、症状は回復可能です。ただし、放置すると回復困難になることもあります。

Q. 自分でビタミンB1サプリを摂取すれば予防できますか?

A. 軽度の栄養不足には有効ですが、基礎疾患がある場合は医師と相談してから摂取しましょう。

Q. アルコールをよく飲みますが、どの程度からリスクがありますか?

A. 個人差はありますが、毎日多量に飲酒する人は注意が必要です。習慣的飲酒者は定期的な健康診断と栄養指導を受けましょう。

まとめ

ウェルニッケ脳症は、命に関わることもある重大な病気ですが、早期に気づき、正しく対処すれば回復が見込める病気でもあります。特に、栄養状態に注意を払い、ビタミンB1を日頃から十分に摂取することが予防の鍵です。

慢性的に栄養状態が悪い方、アルコールをよく摂取する方は、症状が出る前に医療機関を受診し、必要な対策を講じましょう。

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