エキノコックス症

エキノコックス症は、北海道を中心に報告されている寄生虫感染症です。特に野生動物やペットを介して人に感染することがあり、知らぬ間に重症化するケースもあるため、注意が必要です。本記事では、エキノコックス症の概要から感染経路、症状、治療法、そして予防策までを網羅的に解説します。

エキノコックス症とは

エキノコックス症は、「エキノコックス属」の寄生虫によって引き起こされる人獣共通感染症です。特に日本では「多包条虫(Echinococcus multilocularis)」による感染が知られています。

発症のメカニズム

人が感染卵を経口摂取すると、幼虫が肝臓に到達し、そこで増殖して腫瘤を形成します。潜伏期間は5年〜10年以上とされており、初期には自覚症状がほとんどありません。

感染経路

エキノコックス症の感染は主に以下のルートで起こります。

感染経路 具体例
野生動物との接触 キツネの糞に含まれる虫卵を経口摂取
ペットを介した感染 犬や猫が野生動物の死骸に接触し、被毛や口元に虫卵が付着
汚染された水や野菜の摂取 虫卵で汚染された湧水や野草、野菜を生で摂取

エキノコックス症の主な症状

感染後の症状は非常に緩やかで、長期間気づかないことが多いです。以下は主な症状です。

  • 腹部不快感、右上腹部の違和感
  • 肝機能障害
  • 黄疸(重症例)
  • 疲労感、体重減少

特に肝臓への寄生が多く、進行すると周囲の組織を侵食する「がん様病変」とも言われるほどの重症化が見られます。

診断と治療法

診断方法

  • 血液検査(抗体検査)
  • 腹部エコー・CT・MRIによる画像診断
  • 病理組織検査(必要に応じて)

治療方法

感染が確認された場合、以下のような治療が行われます。

  • 外科手術:感染部位を外科的に切除(可能な場合)
  • 薬物治療:アルベンダゾールなどの駆虫薬を長期間服用
  • 経過観察:完全切除が難しい場合、長期的なモニタリングが必要

予防方法

エキノコックス症の予防には、生活習慣の見直しと衛生管理が重要です。

  • 野山や川原で採った山菜・野菜は十分に洗浄・加熱
  • 野生動物やその糞に接触しない
  • ペットに定期的な駆虫薬を投与
  • 湧き水を生で飲まない(必ず煮沸)
  • 外から帰ったら手洗い・うがいを徹底

Q&A:エキノコックス症に関するよくある質問

Q1. 人から人に感染しますか?

A. いいえ、人から人への感染は確認されていません。感染はあくまで虫卵の経口摂取によって起こります。

Q2. どの地域で感染リスクが高いですか?

A. 主に北海道で報告されていますが、観光やアウトドアブームにより本州でもリスクが高まりつつあります。

Q3. ペットはどうすれば安全?

A. 月に1回の定期駆虫、散歩後の身体チェック、野山での放し飼いを避けることが有効です。

まとめ:正しい知識と予防でエキノコックス症を防ごう

エキノコックス症は、早期発見・予防が何より重要な感染症です。感染しても自覚症状が乏しいため、知らないうちに重症化するリスクがあります。ペットとの接し方やアウトドアでの注意点など、日常生活の中で意識することで感染を防げます。

健康を守るためにも、エキノコックス症に関する正しい知識を持ち、予防行動を実践していきましょう。

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