膵臓がんは、その治療の難しさから予後(病気の経過・見通し)が厳しいとされるがんですが、治療法の進歩により、生存率が改善しつつあります。早期発見が極めて重要です。
1. ステージ別生存率(5年相対生存率の目安)
膵臓がんの予後は、診断時の進行度(ステージ)によって大きく異なります。以下の5年相対生存率は、あくまで目安であり、治療法の進歩により改善傾向にあります。
| ステージ | 進行度の目安 | 5年相対生存率の目安 |
| ステージI | がんが膵臓内にとどまる、小さながん。 | 約30%〜50% |
| ステージII | がんが膵臓の周囲に広がり始めている。 | 約15%〜30% |
| ステージIII | 主要な血管を巻き込んでいる、またはリンパ節転移がある。 | 約10%未満 |
| ステージIV | 肝臓や肺など遠隔臓器に転移がある。 | 約5%未満 |
重要な事実
手術が可能(切除可能)なステージであれば、化学療法や放射線療法を組み合わせることで、生存率が大幅に向上します。
2. 最先端の治療法:集学的治療と新しい薬剤
膵臓がんの治療は、単一の治療法ではなく、複数の治療を組み合わせる集学的治療が標準となっています。
| 治療法 | 内容と最先端のトレンド |
| 外科療法(手術) | 術前化学療法・放射線療法(ネオアジュバント療法)を組み合わせることで、切除不能と判断されていたがんを切除可能にする試みが進んでいます。 |
| 化学療法(抗がん剤) | 強力な多剤併用療法(例:FOLFIRINOX、ゲムシタビン+ナブパクリタキセルなど)が主流となり、延命効果が向上しています。 |
| 免疫チェックポイント阻害薬 | 一部の遺伝子異常を持つ膵臓がんに対して、免疫チェックポイント阻害薬が効果を発揮することが確認されており、治療の選択肢が広がっています。 |
| 粒子線治療 | 重粒子線や陽子線を使った放射線治療は、従来のX線よりもがん細胞にピンポイントで照射できるため、副作用を抑えつつ高い効果が期待されています。 |
3. 遺伝リスクと今すぐできる3つの予防法
膵臓がん全体の約5〜10%は、遺伝的な要因が関与している家族性膵臓がんと考えられています。
遺伝リスクのサイン
- 血縁者(特に近親者)に膵臓がんの患者が2人以上いる。
- 特定の遺伝子変異(例:BRCA1/2)を持つと診断されている。
家族歴がある方は、若いうちから専門の消化器内科で「膵臓がんサーベイランス(監視)」を受ける必要があります(超音波内視鏡検査など)。
今すぐできる3つの予防行動
膵臓がんの発生リスクを下げるために、生活習慣を見直すことが最も重要です。
- 禁煙の徹底:タバコは膵臓がんの最も強力なリスク要因です。喫煙者は非喫煙者に比べ、発症リスクが数倍高まります。今すぐ禁煙を始めましょう。
- 糖尿病の厳格な管理:糖尿病(特に急に発症・悪化した糖尿病)は膵臓がんのサインである可能性もあれば、リスクを高める要因にもなります。血糖値のコントロールを徹底してください。
- 節酒と適正体重の維持:過度な飲酒は慢性膵炎を引き起こし、それが膵臓がんのリスクを高めます。また、肥満もリスク要因であるため、バランスの取れた食事と適度な運動で適正体重を維持しましょう。
膵臓がんの治療は日々進歩しています。リスクを理解し、早期発見のためのサインを見逃さず、日々の生活習慣を改善することが、あなたとご家族を守る鍵となります。
