ポリオ(Poliomyelitis)は、ポリオウイルスによって引き起こされる感染症で、主に乳幼児に多く見られます。感染すると、一部の患者で急性灰白髄炎(かいせいかいはくずいえん)を発症し、重度の麻痺を起こす可能性があります。脊髄にウイルスが侵入し、運動神経が破壊されることで、特に脚に後遺症を残すケースが多いです。
ポリオの主な症状
感染しても約90〜95%は無症状で経過しますが、症状が出ると以下のような経過をたどります。
症状の段階 | 主な症状 |
---|---|
無症候性感染 | 症状なし(90%以上) |
軽度の非特異的症状 | 発熱、倦怠感、頭痛、吐き気 |
無菌性髄膜炎型 | 背中の痛み、首のこわばり、筋肉痛 |
麻痺型ポリオ | 片脚や両脚の筋力低下、呼吸筋麻痺(重症) |
ポリオの感染経路
ポリオウイルスは経口感染が主な感染経路です。主にウイルスに汚染された水や食べ物から体内に入り、小腸や喉で増殖します。糞口感染(ふんこうかんせん)とも呼ばれ、衛生環境の悪い地域では感染リスクが高まります。また、感染者の唾液や咳からの飛沫感染も報告されています。
ポリオワクチンの種類と効果
現在、ポリオの予防には以下の2種類のワクチンが用いられています。
ワクチンの種類 | 略称 | 特徴 |
---|---|---|
不活化ポリオワクチン | IPV | 注射タイプ。生ワクチンより安全で、日本では主流。 |
経口ポリオワクチン | OPV | 飲むタイプ。感染予防効果が高いが、副作用の懸念あり。 |
日本では2012年以降、より安全なIPV(不活化ワクチン)が定期接種に採用されています。
世界のポリオ事情と日本の現状
WHO(世界保健機関)は、ポリオ根絶に向けて「世界ポリオ根絶計画(GPEI)」を進めています。以下の表は、世界と日本におけるポリオの現状です。
地域 | 状況 |
---|---|
日本 | 1980年を最後に野生株は未報告。根絶状態。 |
アフガニスタン・パキスタン | 野生型ポリオウイルスの流行地域。 |
アフリカ諸国 | 一部でワクチン由来株の再発生が確認。 |
現代においても国際的な移動が多い中で、日本国内でもワクチン接種による免疫保持が重要です。
Q&A:ポリオに関するよくある質問
- Q1. ポリオワクチンは副反応がありますか?
- A. 不活化ポリオワクチン(IPV)は非常に安全性が高く、重篤な副反応はまれです。ごくまれに発熱や注射部位の腫れが見られることがあります。
- Q2. 大人でもポリオにかかりますか?
- A. 免疫がない場合は感染する可能性があります。特に海外渡航前にはワクチンの追加接種が推奨されます。
- Q3. ポリオはなぜ「小児麻痺」と呼ばれるの?
- A. 主に5歳以下の子どもが重症化しやすく、四肢に麻痺を起こす特徴から「小児麻痺」という別名があります。
まとめ:ポリオは過去の病気ではない
ポリオは、日本ではほぼ根絶された感染症ですが、世界的にはまだ完全に根絶されていないため、油断は禁物です。特に海外渡航時やワクチン未接種の乳幼児にとってはリスクが残ります。適切なワクチン接種が最大の予防策であり、将来的な完全根絶のためにも一人ひとりの意識が重要です。定期接種を確実に行い、自身と社会の健康を守りましょう。