1.マイコプラズマ肺炎の主な検査方法
マイコプラズマ肺炎の診断は、症状や胸部X線検査の結果に加え、病原体を特定する検査によって確定されます。
- 迅速抗原検査(LAMP法など):
- のどを綿棒でぬぐって採取した検体から、遺伝子を増幅してマイコプラズマの遺伝子を検出します。
- 比較的短時間(数十分程度)で結果が出ますが、感染初期は検出感度が低くなる場合があります。
- 血液検査(抗体検査):
- 血液中のマイコプラズマに対する抗体の有無や量を測定します。
- 発症初期には抗体が十分に増えていないため、診断にはペア血清(期間を空けて2回採血)が必要となることがあり、即時の診断には不向きです。
- 胸部X線検査:
- 一般的な肺炎のように肺全体が白くなるのではなく、間質性肺炎(間質という組織の炎症)として、肺炎像が確認されます。
2.マイコプラズマに効果のある主要な治療薬
マイコプラズマ肺炎の原因はマイコプラズマ・ニューモニエという細菌の一種です。通常の細菌とは異なり細胞壁を持たないため、特定の種類の抗菌薬(抗生物質)のみが有効です。
現在、主に以下の3系統の抗菌薬が用いられます。
| 系統 | 主な薬剤 | 特徴と注意点 |
| ① マクロライド系 | クラリスロマイシン、アジスロマイシンなど | 第一選択薬。特に小児によく用いられます。ただし、近年耐性菌が増加しており、効果がない場合もあります。 |
| ② ニューキノロン系 | レボフロキサシン、ガレノキサシンなど | 耐性菌が疑われる場合や、マクロライド系が使用できない成人の治療に用いられます。小児への投与は原則禁忌です。 |
| ③ テトラサイクリン系 | ミノサイクリンなど | マクロライド系が効かない場合や、耐性菌が疑われる場合に使用されます。8歳未満の小児には歯の着色や骨への影響から原則使用できません。 |
3.効果のない抗生物質とその他の注意点
マイコプラズマは細胞壁を持たないという特殊な構造から、一般的な細菌性肺炎に使う抗生物質は効果がありません。
効果がない抗生物質
- ペニシリン系(アモキシシリンなど):細菌の細胞壁合成を阻害する作用がありますが、マイコプラズマは細胞壁を持たないため無効です。
- セフェム系(セファレキシンなど):こちらも細胞壁に作用するため無効です。
治療中の注意点
- 耐性菌の可能性:マクロライド系の抗菌薬を服用しても症状が改善しない場合、耐性菌の可能性があります。その場合は、医師と相談し、ニューキノロン系など他の系統の薬に変更する必要があります。
- 症状の改善の遅れ:マイコプラズマ肺炎は薬が効いても、咳などの症状が長期間(数週間)続くことがあります。自己判断で服薬を中止せず、医師の指示通りに最後まで飲み切ることが重要です。
