レビー小体型認知症の介護で絶対NGな薬とは?専門医が教える幻覚への具体的な対応方法

1. DLBの介護で「絶対NG」な薬:抗精神病薬

レビー小体型認知症(DLB)の患者さんは、認知症の中でも特に薬物に対する感受性が高く、特定の薬を使うと命に関わる重篤な副作用を引き起こす危険性があります。

絶対に避けるべき薬:定型抗精神病薬

DLBの患者さんが「幻覚」や「妄想」「興奮」といったBPSD(周辺症状)を示した場合、安易に以下の定型抗精神病薬を投与することは絶対NGです。

薬剤の系統 代表的な薬剤の例 危険な副作用
定型抗精神病薬 ハロペリドール、クロルプロマジンなど 悪性症候群(高熱、意識障害、筋肉の硬直)やパーキンソン症状の極端な悪化

理由:感受性の高さ

DLBの患者さんは、脳内の特定の神経伝達物質(ドーパミン)の働きが非常にデリケートです。定型抗精神病薬はドーパミンの働きを強く抑えすぎるため、DLBの患者さんに投与すると、重度の副作用(意識消失や嚥下困難)を引き起こし、そのまま命に関わる危険性があります。

代替薬の選択

幻覚や妄想に対する治療が必要な場合は、クエチアピンクロザピンなどの非定型抗精神病薬の中から、低用量で使用が検討されます。また、認知機能改善薬であるドネペジル(アリセプトなど)が幻視の軽減に有効な場合もあります。

2. 専門医が教える幻覚(幻視)への具体的な対応方法

DLBの幻視は非常にリアルで具体的です。介護者が「幻覚ですよ」と否定しても患者さんは納得できず、逆に混乱や興奮を招くことが多いため、「否定しない」対応が鉄則です。

対応の鉄則:肯定(共感)と安心感の提供

段階 介護者の具体的な対応方法 目的
① 否定しない 「あそこに誰かいるね」と言われたら、「そうですか、見えますか」とまず受け止め、否定しない 患者さんの不安や興奮を鎮め、信頼関係を維持する。
② 環境の確認 「暗くて見えにくいかもしれませんね」「何か勘違いかもしれませんね」と患者さんの気持ちを代弁しつつ、明るく照明をつける 幻視は暗い場所に現れやすいため、環境を変えて現実を確認させる。
③ 別の行動へ誘導 「一緒にリビングでお茶を飲みましょうか」「疲れたでしょう、少し横になりませんか」と関心を別の対象へ移す 幻視に囚われている状態から、安全で心地よい現実へと意識を向ける。
④ 不安の解消 私がそばにいますから大丈夫ですよ」と穏やかな声で伝え、手を握るなどして安心感を与える。 幻視によって生じる恐怖や不安を和らげる。

3. その他の介護の注意点

  • 転倒予防:DLBの患者さんはパーキンソン症状(足がすくむ、姿勢が不安定)があるため、転倒リスクが非常に高いです。床の段差をなくし、手すりを設置するなど、住環境の整備が重要です。
  • 睡眠管理:DLBに特有のレム睡眠行動障害(RBD)による夜間の行動異常を防ぐため、日中に活動量を確保し、規則正しい生活リズムを維持しましょう。

DLBの介護は、薬の知識と症状への理解が不可欠です。専門医の指導のもと、服薬管理と非薬物療法(環境調整や接し方)を適切に行うことが、患者さんのQOL維持に繋がります。