大腿ヘルニアは、中高年の女性に多く見られる疾患であり、初期は気付きにくいものの放置すると命に関わることもある病気です。本記事では、大腿ヘルニアの症状、原因、治療法、予防法などをわかりやすく解説します。医療関係者による監修のもと、信頼できる情報をお届けします。
大腿ヘルニアとは?
大腿ヘルニア(だいたいへるにあ)は、腸などの腹部臓器が太ももの付け根(大腿部)にある大腿管という狭い通路を通って皮下に突出する状態です。特に50歳以上の女性に多く見られ、放置すると腸閉塞や壊死などの重大な合併症を引き起こす可能性があります。
項目 | 内容 |
---|---|
病名 | 大腿ヘルニア(femoral hernia) |
主な発生部位 | 太ももの付け根(大腿部) |
好発年齢 | 50歳以上 |
性別 | 女性に多い |
危険性 | 腸閉塞・腸壊死を引き起こすことがある |
大腿ヘルニアの主な症状
初期段階では無症状のことが多い大腿ヘルニアですが、進行すると以下のような症状が現れます。
- 太ももの付け根に小さなしこりがある
- 立ち上がったり、咳をするとしこりが膨らむ
- しこりが押しても引っ込まない
- しこり部分に痛みがある
- 吐き気・嘔吐・腹痛(嵌頓状態)
嵌頓(かんとん)とは、腸の一部が締め付けられ、血流が遮断されて壊死に至る危険な状態です。この状態になると緊急手術が必要になります。
大腿ヘルニアの原因とリスク因子
大腿ヘルニアは以下のような要因によって引き起こされます。
- 腹圧の増加(便秘、妊娠、慢性的な咳など)
- 加齢による筋力低下
- 遺伝的な要因や体質
- 手術歴(特に腹部手術)
リスク因子 | 説明 |
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高齢 | 筋肉や靭帯が弱くなることでヘルニアが発生しやすくなる |
女性 | 骨盤の構造上、大腿管が広くなりやすい |
妊娠・出産経験 | 腹圧が高まるため |
便秘や重い物を持つ習慣 | 日常的に腹圧がかかる |
診断と検査方法
大腿ヘルニアは以下のような診断・検査方法で確定されます。
- 視診・触診:しこりの位置や状態を医師が確認
- 超音波検査(エコー):腸管の突出の有無を確認
- CT検査:ヘルニアの範囲や内容物を詳しく確認可能
見た目や触った感触だけでは鼠径ヘルニアと混同されやすく、CT検査などの画像診断が重要です。
大腿ヘルニアの治療法
治療の基本は外科的手術です。自然に治癒することはなく、放置すると重篤化します。
主な手術方法
- 開腹手術:従来の方法で、局所麻酔で行われることもある
- 腹腔鏡手術:体への負担が少なく、回復も早い
術後は数日の入院で退院可能で、日常生活への復帰も比較的早くなります。
再発を防ぐための予防法
一度手術すれば再発の可能性は低くなりますが、生活習慣に注意することでさらに予防効果を高めることができます。
- 便秘を予防する(食物繊維を多く摂る、水分をしっかり摂る)
- 重い物を持ち上げるときは注意する
- 禁煙(咳を減らす)
- 腹筋を鍛える適度な運動
よくある質問(Q&A)
Q1. 大腿ヘルニアは自然に治りますか?
A. 残念ながら自然治癒はしません。放置すると腸閉塞などのリスクが高まるため、早めの受診と治療が重要です。
Q2. 手術しないとどうなりますか?
A. 腸が締め付けられて血流が途絶える「嵌頓」が起こると、腸壊死や命に関わる状態になります。必ず手術が必要です。
Q3. 大腿ヘルニアと鼠径ヘルニアの違いは?
A. 鼠径ヘルニアは鼠径部(股の上)に起こり、大腿ヘルニアはより下の大腿部に起こります。見た目が似ているため、専門医による診断が必要です。
まとめ
大腿ヘルニアは初期段階では見逃されやすい疾患ですが、進行すると重篤な合併症を引き起こす可能性があります。以下のポイントを押さえましょう。
- 中高年女性に多く、放置は危険
- 太ももの付け根にしこりがあれば医師の診察を
- 確定診断にはCT検査が有効
- 治療は基本的に手術
- 予防には生活習慣の改善が大切
少しでも違和感を感じたら、迷わず専門医を受診しましょう。早期発見・早期治療が何よりも大切です。