「トイレが近い」「水をたくさん飲んでしまう」といった症状で悩んでいませんか?それは単なる水分の取りすぎではなく、もしかすると「尿崩症(にょうほうしょう)」かもしれません。尿崩症はあまり知られていない疾患ですが、放っておくと日常生活に大きな支障をきたす可能性があります。この記事では、尿崩症の原因や症状、診断、治療方法についてわかりやすく解説していきます。
尿崩症とは?
尿崩症とは、腎臓が水分の再吸収を適切に行えなくなることで、大量の尿が排出される病気です。正常な成人の尿量は1日1.5リットル前後ですが、尿崩症になると1日に3リットル以上の尿が出ることもあります。主に抗利尿ホルモン(バソプレシン)の異常や腎臓の感受性の異常が原因です。
尿崩症の種類と原因
尿崩症には主に以下の2種類があります。
種類 | 原因 | 特徴 |
---|---|---|
中枢性尿崩症 | 脳の視床下部や下垂体後葉の障害(外傷・手術・腫瘍など) | 抗利尿ホルモンの分泌が減少 |
腎性尿崩症 | 腎臓が抗利尿ホルモンに反応しない(遺伝・薬剤性など) | ホルモン分泌は正常だが機能しない |
尿崩症の主な症状
尿崩症の症状は次のようなものがあります。
- 頻尿(昼夜問わずトイレが近い)
- 多尿(1日に3リットル以上の尿)
- 口渇(のどの渇きが強い)
- 多飲(水を大量に飲む)
- 夜間頻尿で睡眠障害
症状が進行すると、脱水症状や電解質異常を引き起こすこともあります。
尿崩症の診断方法
尿崩症が疑われる場合、以下のような検査を行って診断されます。
- 血液検査:ナトリウム濃度や浸透圧の確認
- 尿検査:尿の浸透圧、比重などの分析
- 水制限試験:脱水状態でも尿が濃縮されないかどうかを確認
- MRI検査:脳の視床下部や下垂体の異常をチェック
尿崩症の治療法
尿崩症の治療は、その原因によって異なります。
尿崩症の種類 | 治療法 |
---|---|
中枢性尿崩症 | 合成ホルモン(デスモプレシン)の服用や点鼻 |
腎性尿崩症 | 食事療法(低ナトリウム食)、利尿薬(チアジド系など) |
デスモプレシンは非常に効果的で、多くの患者に劇的な改善が見られます。ただし、正しい使用と定期的な診察が必要です。
尿崩症に関するQ&A
Q. 尿崩症は完治しますか?
A. 中枢性尿崩症の一部は、原因となる疾患(腫瘍など)を治療することで改善する場合があります。ただし、多くは長期的な薬物療法が必要です。腎性尿崩症は完治が難しいため、生活の質を維持するための治療が中心です。
Q. 子どもも尿崩症になることがありますか?
A. はい、特に腎性尿崩症では先天性(遺伝性)のケースがあり、幼少期から症状が出ることもあります。成長や発達にも影響するため、早期診断・治療が重要です。
Q. 糖尿病と尿崩症の違いは?
A. 糖尿病も多尿や口渇が症状として出ますが、原因が異なります。糖尿病は血糖値の異常が原因ですが、尿崩症は抗利尿ホルモンの異常が原因です。診断には検査が必要です。
尿崩症との付き合い方・生活の工夫
尿崩症と診断された場合、生活の中での工夫も大切です。
- 水分をこまめに摂取する(特に脱水対策)
- 外出先ではトイレの場所を把握しておく
- 夜間頻尿対策として寝る前の水分量を調整する
- 医師の指示を守り、薬の服用を継続する
まとめ
尿崩症はあまり知られていない病気ですが、早期に発見して適切な治療を行えば、日常生活に大きな支障をきたすことなく過ごすことが可能です。頻尿や口渇などの症状が続く場合は、自己判断せずに医療機関を受診しましょう。