手術だけじゃない!前立腺がんの治療法を徹底比較:放射線・ホルモン療法のメリット・デメリット

前立腺がんは、病状や進行度(リスク分類)、患者さんの年齢、健康状態、そして何よりQOL(生活の質)に対する希望に応じて、最適な治療法が選択されます。

主要な治療法は、大きく分けて以下の3つです。

1. 🔪 外科療法(前立腺全摘除術)

前立腺を精嚢(せいのう)とともに摘出する治療法です。近年では、体への負担が少ないロボット支援手術(ダヴィンチなど)が主流となっています。

メリット デメリット
根治性が高い 全身麻酔が必要で、侵襲性(体への負担)がある。
病理診断が確定 術後の合併症リスクがある(尿失禁、性機能障害)。
再発時に他の治療へ移行しやすい 回復に時間がかかる。
低リスクがんの場合、若年者向き

2. 放射線療法

体の外から高エネルギーの放射線を照射する外照射療法と、小さな線源を前立腺内に埋め込む内照射療法(ブラキセラピー)があります。

治療のメリット・デメリット

メリット デメリット
切らずに治療が可能 効果が現れるまでに時間がかかる。
入院期間が短い、または不要(外照射) 直腸炎、膀胱炎など、周辺臓器への副作用リスクがある。
性機能障害のリスクが手術より低い 治療期間が数週間と比較的長い(外照射)。
高齢者や合併症を持つ方に適応

3. ホルモン療法(内分泌療法)

前立腺がんは、男性ホルモン(アンドロゲン)によって増殖するため、ホルモンの働きを抑える薬を使ってがんの増殖を抑制する治療法です。注射薬が中心となります。

治療のメリット・デメリット

メリット デメリット
副作用が比較的少ない(吐き気など) がん細胞を殺すわけではない(根治が難しい)
治療期間を問わず外来で継続可能 ホルモン欠乏による副作用が必須(ほてり、発汗、性欲減退、骨粗鬆症、筋力低下など)。
進行がんや転移がんの標準治療 長期使用により、治療抵抗性の去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)へ移行することがある。

4. 治療法の選択とQOL(生活の質)の優先順位

最適な治療法は、患者さんの希望によって変わります。

治療法選択の優先順位 選択肢の傾向
根治性と徹底的な治療を優先 手術(全摘除術)。低リスク〜高リスクまで幅広く適用。
体を切らずに治療を優先 放射線療法。高齢者や基礎疾患がある方に適応しやすい。
侵襲を避け、QOL維持を最優先 ホルモン療法(特に進行がん)。副作用は出るが、手術や放射線治療が困難な場合に選択。

治療法を選ぶ際は、必ず担当の泌尿器科医と、PSA値、がんの悪性度(グリソンスコア)、病期、そして尿失禁や性機能障害といった合併症の可能性について十分話し合い、納得した上で決定することが重要です。