白血病は治る病気になった!急性と慢性の違いから治療法(抗がん剤・骨髄移植)の最新動向を解説

白血病はかつて「不治の病」として恐れられていましたが、医学の進歩、特に化学療法や移植医療の発展により、現在では治癒を目指せる病気となりました。しかし、白血病は一種類ではなく、病型によって治療法や予後が大きく異なります。ここでは、白血病の基本から最新の治療動向までを専門家の視点で解説します。

1. 白血病とは?血液のがんの基本構造

白血病は、血液を作る工場である骨髄(こつずい)の中で、白血球を作る細胞(造血幹細胞)ががん化し、異常な細胞(白血病細胞)が無制限に増殖する病気です。この異常な細胞が骨髄を占領することで、正常な血液細胞(赤血球、白血球、血小板)が作れなくなり、貧血、感染、出血などの症状を引き起こします。

2. 急性白血病と慢性白血病の決定的な違い

白血病は、進行の速さやがん化した細胞の種類によって大きく分類されます。

急性白血病(AML・ALL)

  • 特徴: がん化した細胞が幼若(未熟)で、異常な細胞の増殖速度が非常に速いことが特徴です。数日から数週間で症状が急速に悪化するため、早急な治療が必要です。

  • 分類:

    • 急性骨髄性白血病(AML):最も患者数が多いタイプ。

    • 急性リンパ性白血病(ALL):主に小児に多いタイプですが、成人にも発症します。

慢性白血病(CML・CLL)

  • 特徴: がん化した細胞が比較的成熟しており、進行が非常にゆっくりしているのが特徴です。初期は自覚症状がないことが多く、健康診断などで偶然発見されることがあります。

  • 分類:

    • 慢性骨髄性白血病(CML):特定の遺伝子異常(フィラデルフィア染色体)を持つことが特徴。

    • 慢性リンパ性白血病(CLL):主に欧米に多く、近年日本でも増加傾向にあります。

3. 白血病の治療の基本と最新動向

白血病の治療は、病型と患者さんの年齢、全身状態によって選択され、近年、個別化が進んでいます。

① 化学療法(抗がん剤治療)

急性白血病の標準的な治療法です。大量の抗がん剤を投与し、骨髄内の白血病細胞を一掃することを目指します。

  • 導入療法: 最初に強力な抗がん剤治療を行い、血液中や骨髄から白血病細胞を消滅させる(寛解に導く)ことを目指します。

  • 地固め療法・維持療法: 導入療法で目に見えなくなった白血病細胞を完全に根絶するため、さらに抗がん剤治療を継続します。

② 造血幹細胞移植(骨髄移植・臍帯血移植など)

再発リスクが高い急性白血病や、化学療法だけでは治癒が困難な場合に検討されます。

  • メカニズム: 大量の抗がん剤や放射線で患者さん自身の造血機能と白血病細胞を根絶した後、健康なドナー(提供者)から提供された造血幹細胞を輸注し、新しい造血機能を再建する治療法です。

  • 最新動向: HLA(白血球の型)が完全には一致しないドナー(ハプロ移植など)からの移植も技術が進み、ドナーが見つからないという問題が緩和されつつあります。

③ 分子標的薬(特に慢性白血病と一部の急性白血病)

特定の原因物質や遺伝子異常をピンポイントで狙い撃ちにする薬です。

  • 慢性骨髄性白血病(CML)の革命: CMLの原因である「フィラデルフィア染色体」によって作られる異常なタンパク質を阻害する**チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)が開発されました。これにより、CMLは「命に関わるがん」から「飲み薬でコントロールできる慢性疾患」**へと位置づけが大きく変わりました。

  • 急性白血病への応用: AMLやALLの一部においても、特定の遺伝子異常を持つ場合に分子標的薬を併用することで、治療成績が向上しています。

④ 免疫細胞療法(CAR-T細胞療法)

  • 最新の知見: 難治性または再発性のALLなどに対して、患者さん自身のT細胞を採取し、がん細胞を攻撃するよう遺伝子改変して体内に戻すCAR-T細胞療法が実用化されています。これは、特に小児や若年成人の難治性ALLの治療に大きな希望をもたらしました。

4. 治療成績の向上と未来

かつて、白血病の5年生存率は非常に低いものでしたが、特に小児ALLでは現在、80〜90%以上が長期生存できる時代になりました。成人においても、適切な診断と個別化された治療戦略、支持療法の進歩により、治癒率は着実に向上しています。

重要なのは、白血病を疑う症状(原因不明の発熱、全身倦怠感、皮下出血など)が出た際に、すぐに血液内科などの専門医を受診することです。早期の正確な診断と、最新の知見に基づいた最適な治療を選択することが、白血病を克服する鍵となります。