硬膜外血腫

硬膜外血腫(こうまくがいけっしゅ)とは、頭部への強い外傷などをきっかけに、脳の硬膜と頭蓋骨の間に血液が溜まる状態を指します。発症すると急速に脳を圧迫し、命に関わることもある重大な疾患です。この記事では、硬膜外血腫の原因、症状、診断方法、治療法、予後について詳しく解説します。家族や自分に万が一のとき、早期発見・早期治療につなげるために、ぜひ最後までご覧ください。

硬膜外血腫とは?

硬膜外血腫とは、頭蓋内で硬膜と頭蓋骨の間に血液が溜まり、脳を圧迫する状態を指します。多くは頭部外傷によって動脈が損傷することで発症します。放置すれば数時間で昏睡状態に陥り、死に至る危険性もあるため、迅速な診断と治療が必要です。

硬膜外血腫の原因

主な原因は頭部への外傷です。以下のようなケースが多く報告されています:

  • 交通事故による頭部打撲
  • 高所からの転落
  • スポーツによる衝突や転倒
  • 児童虐待(乳幼児の場合)

特に、側頭骨付近の「中硬膜動脈」が損傷されることが多く、血液が急速に硬膜外に漏れ出します。

硬膜外血腫の症状

初期には意識がある場合が多いですが、時間とともに次のような症状が出現します:

時間経過 主な症状
直後〜数十分 頭痛、嘔吐、軽い意識障害
1〜3時間 意識レベルの低下、片方の瞳孔が拡大(散瞳)、手足の麻痺
3時間以降 昏睡状態、脳ヘルニアによる死亡のリスク

これらの症状は「ルーシッドインターバル(lucid interval)」と呼ばれる、意識が一時的に回復した後に急変する特徴を持ちます。

診断方法

硬膜外血腫の診断には以下の方法が用いられます:

  • CTスキャン:最も一般的な方法で、バナナ型の血腫が映る
  • MRI:急性期にはCTより劣るが、慢性期では有効
  • 神経学的検査:瞳孔反射や意識レベルのチェック

治療方法

治療の基本は外科手術による血腫除去です。症状や血腫の大きさに応じて以下の選択肢があります。

治療法 内容
開頭術(開頭血腫除去術) 頭蓋骨を一部開け、血腫を取り除く
穿頭術 小さな穴を開けて血を抜く(小血腫や高齢者に適応)
保存療法 小さく症状がない場合、経過観察

予後と後遺症

早期に治療すれば予後は良好です。しかし、発見が遅れたり脳への圧迫時間が長かった場合、以下のような後遺症が残ることがあります。

  • 記憶障害
  • 言語障害
  • 手足の麻痺
  • けいれん発作

発症後48時間以内の手術が予後を大きく左右します。

Q&A:硬膜外血腫に関するよくある質問

Q. 硬膜外血腫と硬膜下血腫の違いは?

A. 硬膜外血腫は硬膜の外側(頭蓋骨との間)に血が溜まるのに対し、硬膜下血腫は硬膜の内側(脳との間)に血が溜まります。発症までのスピードや原因、治療法に違いがあります。

Q. 転倒後すぐに元気でも安心してよい?

A. いいえ。硬膜外血腫は「ルーシッドインターバル(仮性回復期)」を経て急変することがあるため、頭を打った場合は数時間は注意深く観察しましょう。

Q. 小児や高齢者にも起こりますか?

A. はい。小児は特に転倒による外傷が多く、高齢者は骨が脆く転倒しやすいため、どちらにも発症リスクがあります。

まとめ

硬膜外血腫は一見軽い外傷でも、命に関わる重大な結果を招くことがあります。
特に「意識が一度回復した後に急変する」という特徴を持つため、頭部を打った際には「大丈夫そう」と判断せず、数時間は必ず観察・医療機関の受診を検討してください。

早期発見・早期治療ができれば、後遺症なく回復することも可能です。もしものときのために、知識を備えておきましょう。

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