1. 統合失調症は「治る」のか?
統合失調症は、完全に元の状態に戻るという意味での「完治」は難しいとされることが多いですが、現在の医療では「回復」を目指すことが可能です。
- 回復とは:症状が消失または軽減し、病気とうまく付き合いながら、以前と変わらない、またはそれ以上の充実した社会生活(仕事、学業、人間関係など)を送れるようになる状態を指します。
- 現状:適切な治療により、約1/3の患者さんが症状なく社会復帰し、約1/3が症状を抱えながらも社会生活を送り、残りの約1/3が治療を継続するというのが一般的な見解です。
早期発見・早期治療が、より高い回復率と社会復帰に繋がる鍵となります。
2. 最新の治療法:薬物療法の進化
統合失調症の治療の中心は、脳内の神経伝達物質(主にドーパミン)のバランスを整えるための抗精神病薬による薬物療法です。
① 第二世代抗精神病薬(非定型抗精神病薬)
- 特徴: 現在の主流。従来の薬に比べ、幻覚や妄想といった陽性症状だけでなく、意欲低下や感情鈍麻といった陰性症状にも効果が期待でき、副作用(特に錐体外路症状:手の震えなど)が少ないのがメリットです。
- 主な薬剤: リスペリドン、オランザピン、アリピプラゾールなど。
② 持効性注射剤(LAI: Long-Acting Injection)
- 特徴: 1回注射すると、数週間〜数ヶ月間薬の効果が持続する注射薬です。
- 重要性: 飲み忘れによる再発を防止し、服薬管理の負担を軽減します。服薬アドヒアランス(治療への主体的な取り組み)が困難な患者さんの再発予防に極めて重要です。
3. 再発を防ぐための「服薬継続」と「リハビリ」の重要性
統合失調症において、最も注意すべきは再発です。再発を繰り返すたびに、症状が重くなり、回復が難しくなるリスクが高まります。
① 服薬継続の重要性(再発予防)
- 再発リスク: 症状が安定したからといって、自己判断で服薬を中断すると、90%以上が1年以内に再発すると言われています。
- 役割: 薬は脳の状態を安定させ、幻覚や妄想などの症状の再燃を防ぐ「予防薬」としての役割が大きいです。
- 対処法: 飲み忘れが続く場合は、持効性注射剤の導入や、服薬管理を家族や支援者に依頼するなど、工夫が必要です。
② 精神科リハビリテーションの重要性
薬で症状が安定した後、社会生活に必要な機能を取り戻し、維持するためにリハビリは不可欠です。
| リハビリの種類 | 目的と内容 |
| SST(社会生活技能訓練) | コミュニケーションのスキル、ストレスへの対処法、問題解決能力などをロールプレイングを通じて実践的に学ぶ。 |
| 作業療法 | 趣味や軽作業を通じて、集中力や持続力、達成感を回復させ、社会参加への自信を取り戻す。 |
| 就労支援 | 病状に配慮しながら、職業準備訓練や職場への定着支援を行い、社会復帰をサポートする。 |
薬物療法で脳の異常を整え、リハビリで社会生活の機能を再構築する、この両輪の治療が、統合失調症の回復を支える柱となります。
