聴神経腫瘍(ちょうしんけいしゅよう)は、頭部に発生する良性腫瘍の一つで、難聴やめまいの原因として知られています。早期発見・適切な治療が重要ですが、症状がゆっくり進行するため見過ごされがちです。本記事では、聴神経腫瘍の基礎知識から最新の治療法まで詳しく解説し、疑問を解消します。
聴神経腫瘍とは?基礎知識
聴神経腫瘍は、聴神経(第8脳神経)にできる良性の腫瘍で、「前庭神経鞘腫瘍(ぜんていしんけいしょうしゅよう)」とも呼ばれます。主に聴覚や平衡感覚をつかさどる神経に発生し、片側の難聴や耳鳴り、めまいの症状を引き起こします。発症頻度は稀ですが、徐々に大きくなるため症状の悪化を防ぐためにも早期診断が重要です。
聴神経腫瘍の主な症状
症状 | 特徴 | 発症の頻度 |
---|---|---|
難聴 | 徐々に進行する片側の聴力低下 | 高い |
耳鳴り | 片側の耳に「ジー」や「キーン」という音が聞こえる | 中程度 |
めまい・平衡感覚障害 | ふらつきや回転性のめまい | やや低い |
顔面のしびれや麻痺 | 腫瘍が大きくなると顔面神経を圧迫 | 低い |
聴神経腫瘍の原因とリスク要因
聴神経腫瘍の明確な原因はまだ完全には解明されていませんが、神経の被覆組織であるシュワン細胞から発生することがわかっています。遺伝的要因として「神経線維腫症2型(NF2)」という遺伝性疾患が関与する場合もあります。加えて、長期間の強い騒音曝露や放射線被ばくもリスク要因と考えられています。
- 遺伝性疾患:神経線維腫症2型
- 長期の騒音曝露
- 放射線被ばく歴
- 加齢
診断方法と検査の流れ
聴神経腫瘍の診断は、患者の症状と聴力検査、画像検査を組み合わせて行います。以下が代表的な検査方法です。
検査名 | 概要 | 特徴 |
---|---|---|
聴力検査(オージオメトリー) | 音の聞こえ方を測定 | 難聴の有無と程度を把握 |
MRI(磁気共鳴画像) | 頭部の詳細な画像撮影 | 腫瘍の位置や大きさを正確に確認可能 |
脳波検査・平衡機能検査 | 神経や平衡感覚の機能評価 | めまいの原因鑑別に有用 |
治療法と予後
聴神経腫瘍は良性ですが、腫瘍の大きさや症状の進行度によって治療方針が異なります。主な治療法は「経過観察」「手術療法」「放射線治療」の3つです。
治療法 | 対象 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
経過観察 | 小さくて無症状の腫瘍 | 侵襲が少ない、負担が少ない | 腫瘍が進行すると治療が難しくなる可能性 |
手術療法 | 大きな腫瘍、症状が進行した場合 | 腫瘍の確実な除去が可能 | 顔面神経麻痺など合併症のリスク |
放射線治療(ガンマナイフなど) | 手術リスクが高い患者や小・中程度の腫瘍 | 低侵襲で腫瘍の増殖抑制が可能 | 長期の経過観察が必要 |
よくある質問(Q&A)
Q1: 聴神経腫瘍はがんですか?
A: いいえ。聴神経腫瘍は良性の腫瘍で、がん(悪性腫瘍)ではありません。ただし、腫瘍の成長により神経障害を引き起こすことがあります。
Q2: 手術後に聴力は回復しますか?
A: 聴力の回復は難しい場合が多いですが、腫瘍の大きさや位置により異なります。顔面神経の機能温存にも配慮した手術が行われます。
Q3: 放射線治療は安全ですか?
A: ガンマナイフなどの定位放射線治療は比較的安全ですが、副作用や腫瘍の完全消失を保証するものではありません。定期的な経過観察が重要です。
Q4: どのくらいの頻度で検査を受けるべきですか?
A: 腫瘍の大きさや経過によりますが、一般的には半年から1年に一度のMRI検査が推奨されます。
まとめ
聴神経腫瘍は良性でゆっくりと進行するため、症状が軽いうちは見過ごされやすい病気です。しかし、放置すると聴力障害や顔面神経麻痺などの深刻な症状を引き起こすこともあります。早期発見のためには、片側の難聴や耳鳴り、めまいが続く場合には耳鼻咽喉科を受診することが大切です。診断後は腫瘍の大きさや症状に応じて、経過観察・手術・放射線治療など最適な治療法を選択しましょう。定期的な検査と医師との相談が、良好な予後につながります。