胃がんや胃潰瘍などの治療で「胃切除術」を受けた方の中には、手術後にさまざまな体調不良を感じる方がいます。これを「胃切除後症候群」と呼びます。食後に動悸やめまい、下痢などが起こる場合は要注意です。この記事では、胃切除後症候群の原因、症状、予防法、食事の工夫などを詳しく解説します。
胃切除後症候群とは?
胃切除後症候群(いせつじょごしょうこうぐん)は、胃の全部または一部を切除した後に起こるさまざまな不調の総称です。これは「ダンピング症候群」「吸収障害」「栄養不足」などの複数の症状を含み、患者によって現れ方は異なります。
主な症状と種類
胃切除後症候群には、いくつかのタイプがあります。以下の表に主な分類と症状をまとめました。
症候群の種類 | 主な症状 | 発生時期 |
---|---|---|
早期ダンピング症候群 | 動悸、めまい、吐き気、発汗 | 食後30分以内 |
晩期ダンピング症候群 | 低血糖、脱力感、眠気 | 食後2〜3時間 |
小腸通過障害 | 腹部膨満、けいれん性の腹痛 | 食後1〜2時間 |
胆汁性胃炎 | 胃もたれ、嘔吐、胸やけ | 随時 |
栄養障害 | 体重減少、貧血、ビタミン不足 | 数週間~数か月後 |
胃切除後症候群の原因
胃切除後に起こる症状は、主に以下のような理由によって引き起こされます。
- 胃の貯留機能が失われる:食べ物が急速に腸へ流れ込む
- ホルモン分泌の変化:インスリン分泌の急増による低血糖
- 胆汁の逆流:胃酸の減少により胆汁が胃に逆流
- 消化吸収機能の低下:鉄分やビタミンB12の吸収不足
日常生活での対処法・予防策
胃切除後症候群の予防や症状の軽減には、生活習慣の工夫が重要です。
食事の工夫
- 1回の食事量を少なくし、1日5〜6回に分けて食べる
- 食後はしばらく横にならず、30分以上座って安静にする
- 水分は食事中ではなく、食後30分以降に摂取
- 消化に良い食品(うどん、おかゆ、柔らかく煮た野菜など)を選ぶ
栄養補助とビタミンの補給
ビタミンB12や鉄、カルシウムなどは吸収されにくいため、医師の指導のもとサプリメントや注射による補給が必要です。
Q&A:よくある質問
Q1. 胃切除後に甘いものを食べると気分が悪くなるのはなぜ?
A. これは晩期ダンピング症候群の可能性があります。糖分の急激な吸収によりインスリンが大量に分泌され、低血糖状態を引き起こします。
Q2. 胃切除後の体重減少は止められますか?
A. 低栄養状態を避けるために、小まめな食事と栄養バランスを重視した食生活が必要です。必要に応じて管理栄養士に相談しましょう。
Q3. ダンピング症候群はいつまで続くの?
A. 多くの方は手術後6ヶ月〜1年で改善しますが、個人差があります。生活習慣の改善が大きな鍵となります。
Q4. 市販薬での対処は可能?
A. 一部の症状(胃もたれ・下痢)に対して市販薬は有効なこともありますが、根本治療にはなりません。必ず医師と相談してください。
まとめ:術後の不調は我慢しないで
胃切除後症候群は、手術後の身体の変化によって起こる自然な反応です。しかし、正しい知識と対応で大きく症状を軽減できます。日々の食生活の工夫や定期的な通院を通じて、自分の体と向き合いながら上手に過ごしていきましょう。
ポイントまとめ:
- 胃切除後症候群には複数のタイプがある
- 症状の多くは食後に起こる
- 食生活の工夫が予防・改善の鍵
- 自己判断で放置せず、専門医に相談を
※本記事は医療行為を推奨するものではありません。体調の変化を感じた場合は、必ず医師に相談してください。