胃にできる腫瘍の中でも、粘膜下層に発生する「
胃粘膜下腫瘍(いねんまくかしゅよう)」は、発見が難しく症状も分かりにくいため、注意が必要な疾患の一つです。本記事では、胃粘膜下腫瘍の原因、症状、検査方法、治療法、予後までを詳しく解説します。
胃粘膜下腫瘍とは?
胃粘膜下腫瘍とは、胃の内側にある「粘膜」の下に発生する腫瘍の総称です。良性のものから悪性のものまで存在し、見た目だけでは判断がつきにくいのが特徴です。
種類 |
特徴 |
リスク |
GIST(消化管間質腫瘍) |
粘膜下腫瘍で最も多い |
悪性化の可能性あり |
平滑筋腫 |
筋肉由来の良性腫瘍 |
基本的に良性 |
脂肪腫 |
脂肪組織から発生 |
稀に大きくなる |
神経鞘腫 |
神経に由来する腫瘍 |
基本的に良性 |
胃粘膜下腫瘍の原因とは?
胃粘膜下腫瘍の原因は腫瘍の種類によって異なりますが、GISTの場合は「c-kit遺伝子」の異常が関与しているとされています。生活習慣や食生活の影響は直接的には少ないものの、胃の健康状態を保つことは重要です。
- 遺伝的要因(GIST)
- 慢性的な胃の炎症
- ピロリ菌との関係は限定的
どんな症状があるのか?
胃粘膜下腫瘍は、無症状であることが多く、健康診断や胃カメラ検査で偶然発見されることがほとんどです。ただし、以下のような症状が見られることもあります。
- 胃もたれ
- 腹部の違和感
- 出血による黒色便
- 腫瘍が大きい場合の腹痛
症状が出た場合には、腫瘍が進行している可能性もあるため、早急な検査が必要です。
検査と診断方法
胃粘膜下腫瘍の診断には、内視鏡検査(胃カメラ)だけでは不十分な場合があります。以下のような複数の検査が併用されます。
検査名 |
目的 |
上部消化管内視鏡 |
腫瘍の位置や大きさを確認 |
内視鏡的超音波検査(EUS) |
腫瘍の深さや構造を評価 |
CT・MRI |
他臓器への転移の有無を確認 |
組織生検(針生検など) |
細胞レベルでの診断 |
治療法とその選択基準
治療法は腫瘍の大きさ・位置・悪性度によって異なります。良性の小さな腫瘍であれば、経過観察にとどめることもありますが、以下のような治療法が選択されます。
- 内視鏡的切除:腫瘍が2cm未満かつ悪性の可能性が低い場合
- 腹腔鏡手術:より大きな腫瘍や位置が難しい場合
- 開腹手術:転移や悪性が疑われる場合
- 分子標的治療:GISTに対してイマチニブなどの薬剤を使用
治療の選択は専門医による詳細な診断に基づいて行われます。
予後と再発の可能性
胃粘膜下腫瘍の予後は、その種類と治療の早期性によって大きく異なります。GISTなどの悪性腫瘍であっても、早期発見・早期治療によって5年生存率は大きく向上します。
腫瘍の種類 |
予後 |
再発リスク |
良性腫瘍 |
非常に良好 |
低い |
低悪性GIST |
治療後も経過観察必要 |
中程度 |
高悪性GIST |
薬物療法併用で改善可能 |
高い |
よくある質問(Q&A)
Q. 胃粘膜下腫瘍はがんですか?
A. 胃粘膜下腫瘍はすべてがんというわけではありません。GISTの一部が悪性の場合がありますが、多くは良性です。
Q. 手術をせずに経過観察だけで大丈夫ですか?
A. 小さくて成長が見られない腫瘍であれば経過観察も可能ですが、定期的な検査は必須です。
Q. どんな検査で発見できますか?
A. 一般的には胃カメラで見つかりますが、正確な診断には超音波内視鏡やCT、MRIが必要になります。
まとめ:早期発見と定期検査がカギ
胃粘膜下腫瘍は、症状が出にくく見逃されやすい疾患ですが、放置すると重大な健康リスクにつながる可能性があります。年に一度の健康診断や胃内視鏡検査を受けることで、早期発見・早期治療が可能になります。特に家族に消化器系の疾患がある方や、胃に違和感を感じる方は、医師に相談して適切な検査を受けるようにしましょう。