脊柱後彎症

脊柱後彎症(せきちゅうこうわんしょう)は、背骨が過度に後ろへ湾曲してしまう疾患です。多くの場合は加齢に伴って起こる自然な現象の一部ですが、症状が進行すると日常生活に大きな支障をきたすことがあります。本記事では、脊柱後彎症の原因・症状・診断・治療法・予防策について、詳しく解説します。腰や背中の不調が気になる方、姿勢の変化に悩む方は必見の内容です。

脊柱後彎症とは?

脊柱後彎症は、背骨の自然なS字カーブが崩れ、特に胸椎が異常に後方へ湾曲してしまう状態を指します。医療用語では後弯(こうわん)変形とも呼ばれ、高齢者を中心に多く見られます。

脊柱の正常なカーブ

人間の背骨は、以下のように自然なカーブを描いています:

部位 正常な湾曲
頚椎(首) 前弯
胸椎(背中) 後弯
腰椎(腰) 前弯

脊柱後彎症では、胸椎の後弯が過度に進み、背中が丸くなる状態になります。

原因とリスクファクター

脊柱後彎症は単一の原因で発症するものではなく、さまざまな要因が重なって起こります。

主な原因

  • 加齢:椎間板や椎体の変性による姿勢変化
  • 骨粗鬆症:背骨の圧迫骨折が後彎を引き起こす
  • 先天性要因:生まれつきの椎骨形成不全
  • 神経・筋疾患:筋ジストロフィーやパーキンソン病など
  • 長時間の悪い姿勢:猫背の習慣やスマホ・パソコンの長時間使用

リスクが高い人

以下のような方は脊柱後彎症になりやすい傾向があります:

  • 70歳以上の高齢者
  • 閉経後の女性(骨密度の低下)
  • 運動不足の人
  • 過去に背骨の骨折歴がある人

症状と進行

初期には自覚症状がないこともありますが、進行するにつれて以下のような症状が現れます。

代表的な症状

症状 内容
姿勢の変化 背中が丸くなる、猫背が悪化する
背中・腰の痛み 長時間の立位・歩行で悪化
身長の低下 数センチ~10cm以上縮むことも
呼吸のしづらさ 重度になると肺が圧迫される
バランス障害 転倒しやすくなる

診断方法

医療機関では以下のような方法で診断が行われます。

主な検査項目

  • 問診・視診:姿勢の確認や生活習慣のヒアリング
  • X線検査(レントゲン):後弯角度(コブ角)を測定
  • MRI/CT:神経圧迫や椎体の状態を詳しく確認
  • 骨密度検査:骨粗鬆症の有無を確認

コブ角による分類

脊柱の湾曲の程度は、「コブ角(Cobb角)」という数値で評価されます:

コブ角(度) 分類
0~40° 正常~軽度
40~60° 中等度
60°以上 重度

治療方法

脊柱後彎症の治療は、症状の重さによって異なります。

保存療法

  • 運動療法:背筋や体幹を鍛える体操
  • 装具療法:コルセットや矯正具の使用
  • 薬物療法:鎮痛薬、骨粗鬆症薬など

手術療法

重症例や神経症状が出ている場合には手術が検討されます:

  • 脊椎固定術:金属のインプラントで骨を固定
  • 除圧術:神経圧迫の緩和

予防とセルフケア

脊柱後彎症を未然に防ぐ、または進行を遅らせるためには、以下のような習慣が効果的です。

おすすめの対策

  • 背筋を伸ばすストレッチを毎日行う
  • 骨密度を維持するカルシウム・ビタミンDの摂取
  • 適度な筋トレ(特に背筋・腹筋)
  • 定期的な健康診断で骨密度をチェック
  • 長時間の前かがみ姿勢を避ける

よくある質問(Q&A)

Q. 脊柱後彎症は自然に治りますか?

A. 基本的には自然治癒は難しく、進行を止めるためには運動療法や医療的介入が必要です。

Q. 脊柱後彎症と猫背は違うのですか?

A. 猫背は一時的な姿勢の問題ですが、脊柱後彎症は骨構造そのものが変形している病的な状態です。

Q. 自宅でできる改善体操はありますか?

A. 背筋のストレッチや、壁に背をつけて立つ姿勢矯正体操が有効です。理学療法士の指導を受けるとより効果的です。

Q. 子どもや若年層にも発症しますか?

A. 先天性や姿勢性後彎症として若年層でも発症することがありますが、主に高齢者に多い疾患です。

まとめ

脊柱後彎症は放置すると痛みや生活の質の低下を招く疾患です。特に高齢者では骨粗鬆症と合併して進行しやすいため、早期の発見と対処が重要です。日常的に姿勢に注意し、背筋を鍛える運動を習慣化することで予防・改善が期待できます。

気になる症状がある場合は、整形外科や脊椎専門のクリニックで早めに相談しましょう。

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