「尿に糖が出ている」と言われたら、まず糖尿病を疑う方が多いかもしれません。しかし、血糖値が正常でも尿糖が出ることがあります。それが「腎性糖尿」です。
腎性糖尿は糖尿病とは異なるメカニズムで起こる症状です。この記事では、腎性糖尿とは何か、その原因、症状、検査・診断方法、そして治療法や生活上の注意点まで、医療知識がない方にも分かりやすく解説します。
腎性糖尿とは?
腎性糖尿(じんせいとうにょう)とは、血糖値が正常にもかかわらず、尿中にブドウ糖(グルコース)が排泄される状態を指します。これは糖の再吸収を担う腎臓の機能に異常があることで生じます。
腎臓には、血液中の糖を一旦ろ過して、必要なものは再吸収する働きがありますが、腎性糖尿ではこの再吸収がうまくいかず、糖が尿に漏れ出してしまいます。
項目 | 腎性糖尿 | 糖尿病性尿糖 |
---|---|---|
血糖値 | 正常またはやや低め | 高い(空腹時で126mg/dL以上など) |
尿糖の原因 | 腎臓の再吸収障害 | 血糖値が腎閾値を超えるため |
治療の必要性 | 基本的に不要 | 治療が必要 |
腎性糖尿の原因
腎性糖尿の原因は大きく分けて次の2つがあります:
- 先天性(遺伝性):生まれつき腎臓の糖再吸収機能が弱い
- 後天性:腎障害や一部の薬剤の影響で発症することもある
特に、SGLT2阻害薬という糖尿病治療薬の使用者では意図的に尿糖が排出されるため、腎性糖尿に似た状態になりますが、これは薬理作用によるものであり病的ではありません。
腎性糖尿の症状
腎性糖尿自体にはほとんど症状がありません。通常は、健康診断の尿検査で「尿糖陽性」が出て初めて発見されます。
ただし、以下のような症状がある場合は他の病気が隠れている可能性もあるため注意が必要です。
- 体重減少
- 喉の渇き
- 頻尿
これらは糖尿病に多い症状ですが、腎性糖尿だけでこれらが強く出ることはまれです。
腎性糖尿の診断と検査方法
腎性糖尿は以下の検査によって診断されます。
- 血糖検査:空腹時血糖・HbA1cで糖尿病を否定
- 尿検査:尿糖の有無を確認
- OGTT(経口ブドウ糖負荷試験):血糖と尿糖の変化を見る
血糖が正常で尿糖が出る状態が続き、他の腎疾患が否定された場合、腎性糖尿と診断されます。
腎性糖尿の治療法と注意点
腎性糖尿は基本的に治療不要な良性の状態です。
ただし、次のようなケースでは医師の経過観察が必要です。
- 他の腎機能障害が疑われる場合
- 体重の急激な変化がある場合
- 家族に糖尿病の既往がある場合
また、尿糖が出るために学校や会社の健康診断で「再検査」とされることがありますが、血糖が正常であれば問題ありません。
よくある質問(Q&A)
- Q. 腎性糖尿は糖尿病になりますか?
- A. 腎性糖尿は糖尿病とは異なる機序で発症するため、糖尿病のリスクとは直接関係しません。
- Q. 腎性糖尿は遺伝しますか?
- A. 一部の腎性糖尿は遺伝性があるとされていますが、日常生活に大きな支障をきたすことは稀です。
- Q. 食事制限は必要ですか?
- A. 基本的に不要ですが、肥満や家族歴がある場合はバランスの良い食事が推奨されます。
まとめ
腎性糖尿は血糖値が正常にもかかわらず尿糖が出る状態で、治療の必要がない良性の疾患です。糖尿病と誤解されがちですが、しっかりと区別することが大切です。
定期的な健康診断と、必要に応じた血液検査を受けることで、正確な診断と安心した生活が送れます。もし健康診断で「尿糖陽性」と出た場合も、慌てず医師に相談しましょう。