腸管出血性大腸菌感染症

腸管出血性大腸菌感染症は、特に夏から秋にかけて増加する食中毒の一種で、重篤な症状を引き起こすことがあります。この記事では、腸管出血性大腸菌感染症の原因、症状、予防法、治療法について詳しく解説し、よくある疑問にもQ&A形式で答えます。正しい知識を持って感染を予防し、万が一感染した場合も適切に対応できるようにしましょう。

腸管出血性大腸菌感染症とは?

腸管出血性大腸菌(O157など)は、腸内に侵入すると強力な毒素(志賀毒素)を産生し、激しい腹痛や下痢、場合によっては血便を引き起こします。重症化すると溶血性尿毒症症候群(HUS)を引き起こし、特に小児や高齢者で生命に関わることもあります。

主な原因と感染経路

腸管出血性大腸菌は主に以下の経路で感染します。

感染経路 具体例
食品感染 加熱不十分の牛肉(特にひき肉)、生野菜、井戸水
接触感染 感染者の便や汚染物に触れた後の手指からの感染
動物由来 感染した家畜(牛や羊など)との接触や、その糞便からの感染

症状の特徴と診断方法

感染後、通常2〜8日間の潜伏期間を経て症状が現れます。主な症状は以下の通りです。

  • 激しい腹痛
  • 水様性または血性の下痢
  • 発熱(軽度の場合が多い)
  • 嘔吐

重症化すると、溶血性尿毒症症候群(HUS)を発症し、腎機能障害や貧血、血小板減少などの症状が見られます。診断は便の培養検査やPCR検査で行われます。

治療法と注意点

腸管出血性大腸菌感染症は抗生物質の使用が逆効果となることが多く、基本的には対症療法が中心です。

治療内容 詳細
水分補給 脱水症状の予防・改善が最優先
安静 身体の負担を軽減し、回復を促進
重症時の入院治療 溶血性尿毒症症候群(HUS)を発症した場合は集中治療が必要

抗生物質は菌の破壊により毒素が大量に放出されるリスクがあるため、医師の指示なしには使用しないでください。

予防法と日常生活で気をつけること

感染を防ぐためには、食品の取り扱いに注意することが重要です。以下の表に主な予防策をまとめました。

予防策 具体的なポイント
食品の十分な加熱 特にひき肉は中心まで75℃以上で1分以上加熱
手洗いの徹底 調理前・トイレ後・外出後は石けんでよく洗う
生野菜の洗浄 流水でよく洗い、汚染リスクを減らす
井戸水や生水の利用回避 安全が確認された水を使う
感染者の隔離と衛生管理 便の処理や手指消毒を徹底する

よくある質問(Q&A)

Q1. 腸管出血性大腸菌はどのくらいの期間感染力がありますか?

A1. 通常、症状が治まっても1〜2週間は便中に菌が排出されるため、感染力があります。特に子どもは学校や保育園の登園・登校制限が設けられることもあります。

Q2. 抗生物質は使ってもいいですか?

A2. 腸管出血性大腸菌感染症では、抗生物質が逆に症状を悪化させることがあるため、医師の判断なしに使用してはいけません。

Q3. どんな食べ物が危険ですか?

A3. 特に加熱が不十分なひき肉、生の野菜、生水がリスクが高いです。生食する場合は十分に洗浄・加熱を心がけましょう。

Q4. 子どもが感染した場合、学校はどうなりますか?

A4. 医療機関の許可が出るまで登園・登校が制限されることがあります。周囲への感染拡大を防ぐために厳格な管理が求められます。

Q5. 溶血性尿毒症症候群(HUS)とは何ですか?

A5. 腸管出血性大腸菌の毒素により腎臓が障害される病態で、貧血や血小板減少、腎不全を引き起こします。重症化すると入院治療が必要です。

まとめ

腸管出血性大腸菌感染症は、重篤な症状を引き起こす恐れのある食中毒です。主な感染源は加熱不十分な食品や汚染された水、感染者との接触です。症状が出た場合は早めに医療機関を受診し、自己判断で抗生物質を使わないことが重要です。また、日常生活では手洗いや食品の十分な加熱など基本的な衛生管理を徹底することで感染リスクを大きく減らせます。正しい知識を持ち、安心・安全な生活を送りましょう。

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