腸閉塞（イレウス）の最も一般的な原因は、過去の腹部の手術が原因で生じる腸管の癒着（ゆちゃく）です。予防には、この癒着による閉塞を防ぐための生活習慣が鍵となります。
1. 最大の原因：手術歴と癒着のメカニズム
腸閉塞は、過去の腹部の手術歴がある方に発生リスクが高まります。
| 要因 | メカニズム |
| 手術歴 | 腹部手術（特に開腹手術）を行うと、術後の創傷治癒過程で腸の表面や腹腔内の臓器同士がくっついてしまうことがあります。これが癒着です。 |
| 癒着による閉塞 | 癒着した腸管が折り曲がったり、外部から締め付けられたりすることで、腸の内容物（消化物、ガス）の流れが物理的に遮断され、腸閉塞を引き起こします。 |
癒着は手術後の宿命
腹部手術を受けた方の90%以上で、程度の差はあれ癒着は生じると言われています。癒着自体を完全に防ぐことは困難ですが、生活習慣で閉塞のリスクは下げられます。
2. 腸閉塞を予防する3つの生活習慣
手術歴があり、腸閉塞のリスクが高い方が日常生活で実践すべき予防法は、「腸管の負担を減らし、スムーズな通過を促すこと」です。
① 食物繊維の質と量のコントロール
食物繊維は便通を良くしますが、腸閉塞のリスクがある方にとっては、不溶性食物繊維（水に溶けにくい繊維）の過剰摂取が、かえって腸管内で詰まり（内容物イレウス）の原因となることがあります。
- 推奨：水溶性食物繊維（海藻類、果物、こんにゃく、山芋など）を積極的に摂り、便を柔らかくする。
- 注意：不溶性食物繊維が多いもの（きのこ類、ごぼう、タケノコなど）は、細かく刻む、柔らかく煮るなど消化しやすい工夫をし、一度に大量に摂らない。
② こまめな「水分補給」の徹底
水分の不足は便を硬くし、詰まりやすくします。
- 推奨：食事以外にも、水や麦茶など（カフェインや糖分の少ないもの）をこまめに補給する。
- 目的：特に手術歴がある方は、腸管内で内容物がスムーズに移動し、便が硬くなるのを防ぐために十分な水分が必要です。
③ 軽度の「運動と腹部の冷やしすぎ回避」
腸管の動き（蠕動運動）を促し、溜まったガスや便を排出しやすくします。
- 運動：ウォーキングなど腹部に過度な負担をかけない軽い運動を日常的に行う。
- 腹部の冷え回避：体が冷えると腸の動きが悪くなるため、腹巻きなどで腹部を温かく保つ。
これらの生活習慣を継続することで、癒着があっても内容物が詰まりにくい、腸に優しい環境を保つことができます。
