血友病(けつゆうびょう)は、血液が正常に固まらない遺伝性の病気です。小さなケガでも出血が止まりにくく、日常生活に様々な制約が伴います。本記事では、血友病の原因、症状、診断方法、治療法、生活上の注意点までをわかりやすく解説します。
血友病とは?その基本情報
血友病とは、血液が固まるために必要な「凝固因子」が不足または欠損している遺伝性疾患です。主に男性に発症することが多く、日本では約1万人に1人の割合で発症するとされています。
分類 | 特徴 | 不足している凝固因子 |
---|---|---|
血友病A | 最も多いタイプ | 第VIII因子 |
血友病B | クリスマス病とも呼ばれる | 第IX因子 |
血友病の原因と遺伝のしくみ
血友病は、X染色体にある遺伝子の異常によって起こります。そのため、遺伝的に女性が保因者となり、男性に発症するケースが大多数です。以下に簡単な遺伝のしくみを示します。
親の遺伝型 | 子の性別と発症リスク |
---|---|
母:保因者 / 父:正常 | 息子:50%で血友病 娘:50%で保因者 |
母:正常 / 父:血友病 | 息子:血友病なし 娘:全員保因者 |
血友病の主な症状
血友病の症状は出血傾向が中心で、重症度によって以下のように分類されます。
重症度 | 凝固因子活性 (%) | 症状の特徴 |
---|---|---|
重症 | <1% | 自然出血が頻発、関節・筋肉内出血 |
中等症 | 1〜5% | 外傷後に出血しやすい |
軽症 | 5〜40% | 手術・ケガの際に出血が長引く |
特に関節内出血を繰り返すと、「血友病性関節症」になる恐れがあり、関節の変形や可動域制限が起こることがあります。
血友病の診断と検査方法
血友病は、出血傾向の問診や家族歴の確認のほか、以下の検査によって診断されます。
- 凝固時間検査:APTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)の延長
- 凝固因子活性測定:第VIII因子・第IX因子の活性を測定
- 遺伝子検査:原因遺伝子の変異確認(保因者診断含む)
早期診断により、合併症を防ぎながら適切な管理が可能になります。
血友病の治療法
血友病の主な治療法は、欠損している凝固因子を補充する「補充療法」です。以下のような治療方法があります。
治療法 | 内容 | 頻度 |
---|---|---|
定期補充療法 | 定期的に凝固因子製剤を注射 | 週2〜3回 |
オンデマンド療法 | 出血時にのみ補充 | 出血時 |
非凝固因子治療 | 新しい抗体医薬(例:エミシズマブ)など | 週1回または月1回 |
最近では皮下注射で済む治療法も登場し、生活の質が大きく向上しています。
血友病患者の生活と注意点
血友病のある人が安全に生活するためには、以下の点に注意することが重要です。
- 激しい運動や格闘技は避ける
- 定期的な関節のケア・リハビリ
- 歯科治療の前には必ず主治医に相談
- 出血のサインを見逃さない
学校や職場への理解を得ることも、安心した日常生活には欠かせません。
Q&A:血友病に関するよくある質問
Q1. 血友病は治る病気ですか?
A. 現時点では完治は難しいですが、適切な治療により、健康な人とほぼ同じ生活を送ることが可能です。
Q2. 女性でも発症しますか?
A. 基本的には保因者として症状がないことが多いですが、稀に女性でも症状が出る「血友病キャリア」として出血傾向がみられることがあります。
Q3. 子どもが血友病と診断されたらどうすればよいですか?
A. 小児科や専門医のフォローのもと、日常生活での安全対策や、保育園・学校との連携をしっかり行うことが重要です。
まとめ:血友病とともに生きるために
血友病は遺伝性の病気ですが、現在では治療法が大きく進歩しており、早期診断・継続的な管理により、社会生活を普通に送ることが可能です。正しい知識と周囲の理解を得ることで、本人や家族の負担を減らすことができます。
家族に血友病がある方、もしくは出血傾向が気になる方は、早めに医療機関で相談しましょう。未来を見据えた適切なサポートが、安心した生活への第一歩となります。