進行性核上性麻痺(PSP)の初期症状と特徴
PSPは、脳の広範囲にタウ蛋白という異常なタンパク質が蓄積することで、様々な神経症状を引き起こします。
| カテゴリ | 初期症状と特徴 |
| 歩行障害・バランス障害 | 最も特徴的な初期症状。特に原因もなく頻繁に後ろへ倒れる(後方突進)またはふらつく。体がこわばり、歩行が不安定になる。 |
| 眼球運動障害 | 垂直方向の眼球運動の障害(上下方向が見えにくくなる)から始まる。特に下を見ることが難しくなり、階段を降りるのが困難になる。 |
| 動作緩慢・固縮 | 動作が遅くなる(無動)、筋肉が硬くなる(固縮)など、パーキンソン病に似た症状が現れる。 |
| 認知機能・精神症状 | 無関心(アパシー)や抑うつ、感情のコントロールが難しくなる(仮性球麻痺)。 |
| 嚥下障害 | 初期から食べ物が飲み込みにくい、むせやすいといった症状が現れやすい。 |
パーキンソン病との決定的な違い
PSPの症状はパーキンソン病(PD)と間違われやすいですが、以下の点が診断上の決定的な違いとなります。
| 特徴 | 進行性核上性麻痺 (PSP) | パーキンソン病 (PD) |
| 初期の主要症状 | 歩行不安定、後ろへの転倒、眼球運動障害(特に上下) | 安静時の手の震え、動作緩慢 |
| 症状の左右差 | 比較的左右差がなく、両側同時に進行する | 初期は左右差があることが多い |
| 薬への反応 | L-ドーパ薬などのパーキンソン病治療薬がほとんど効かない(効きにくい) | L-ドーパ薬が非常によく効く |
| 眼球運動 | 垂直方向(特に下)の視線麻痺が特徴的 | 眼球運動は比較的正常に保たれる |
| 姿勢 | 首が反り返る(後弓反張)など、体軸が伸展する傾向がある | 前かがみ(前屈姿勢)になることが多い |
L-ドーパ薬の反応性と垂直方向の視線麻痺が、臨床診断における最も重要な鑑別ポイントです。
診断と専門医の選び方
診断方法
PSPの診断は、特定の検査で確定できるものではなく、上記の臨床症状と経過、そして画像検査を総合的に評価して行われます。
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MRI検査:脳幹の一部(中脳)が萎縮し、蜂やハチドリの形に似た特徴的な所見(ハミングバードサイン)が見られることがあります。
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薬剤反応テスト:L-ドーパ薬を投与し、症状の改善が見られないことを確認することも診断の補助になります。
専門医の選び方
PSPのような非典型的なパーキンソン症候群は、経験豊富な専門医による診断が不可欠です。
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神経内科を受診してください。
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特に日本神経学会認定の「神経内科専門医」であり、「運動障害疾患(パーキンソン病、PSPなど)」の診療経験が豊富な医師がいる施設を選ぶことが重要です。
PSPは難病ですが、早期に適切な診断とリハビリテーション、対症療法を開始することで、転倒リスクの軽減や嚥下障害への対応など、生活の質の維持に繋がります。
