骨盤臓器脱

「最近、お腹に重だるさを感じる」「座っていると何かが出ているような感覚がある」――そんな違和感を覚えていませんか?
それは、もしかすると「骨盤臓器脱(こつばんぞうきだつ)」かもしれません。
特に出産経験のある女性や更年期以降の女性に多く見られるこの症状は、日常生活の質(QOL)を大きく左右する可能性があります。

この記事では、骨盤臓器脱の症状、原因、予防法、治療法、そしてよくある疑問について、わかりやすく解説します。
表やQ&Aも交えて、初めての方でも安心して読める内容となっています。


骨盤臓器脱とは?

骨盤臓器脱とは、骨盤の中にある臓器(膀胱・子宮・直腸など)が、本来あるべき位置から下がり、腟から外へ飛び出す、または突出してくる状態を指します。

医学的には「骨盤底障害(pelvic floor disorder)」の一種とされ、年齢や出産、加齢などにより骨盤底筋が弱くなることで発症します。

種類 特徴
膀胱瘤(ぼうこうりゅう) 膀胱が腟側に下がってくる状態。尿漏れや頻尿を伴う。
子宮脱 子宮が腟口から出てくる。重症になると完全に突出することも。
直腸瘤 直腸が腟側へ押し出され、排便が困難になる。
腟断端脱 子宮摘出後に腟の断端が脱出する状態。

骨盤臓器脱の主な症状

症状は人によって異なりますが、以下のような違和感や不調が報告されています。

  • 腟の入り口から何かが出てくる感覚
  • 座ったときや歩行時の不快感・異物感
  • 下腹部の重だるさ
  • 尿漏れ・頻尿・排尿困難
  • 便秘や排便困難

特に朝は気にならないが、夕方になると症状が強くなるという人も多く、重力の影響で臓器がさらに下がるためと考えられています。

骨盤臓器脱の原因とリスク因子

骨盤臓器脱は複数の要因が重なって起こります。

主なリスク因子は以下の通りです。

リスク因子 内容
出産経験 特に自然分娩で大きな赤ちゃんを出産した場合にリスクが高い
加齢 筋肉の弾力が低下し、支持力が弱くなる
閉経後 エストロゲンの減少により組織が脆弱に
肥満 体重が骨盤底筋に常に負荷をかける
慢性的な咳・便秘 腹圧がかかりやすい習慣が骨盤臓器脱を助長

骨盤臓器脱の予防とセルフケア

骨盤臓器脱は予防や早期対処によって進行を抑えることが可能です。以下の方法を生活に取り入れてみましょう。

1. 骨盤底筋体操(ケーゲル体操)

骨盤底筋を鍛える最も効果的な方法が「ケーゲル体操」です。排尿を途中で止めるときに使う筋肉を意識しながら、5秒間締めて、ゆっくり緩めるという動きを1セットとし、10〜15回を1日3セット行いましょう。

2. 便秘を予防する

慢性的な便秘は腹圧を高め、骨盤臓器脱のリスクを高めます。食物繊維や水分を意識して摂取し、排便リズムを整えましょう。

3. 重い物を避ける

重いものを持ち上げるときに腹圧がかかるため、無理をせず、荷物を持つときは必ず膝を使いましょう。

4. 適正体重を保つ

肥満は骨盤底に過剰な負荷をかけるため、バランスの良い食生活と適度な運動で健康的な体重を維持することが大切です。

骨盤臓器脱の治療法について

治療は症状の程度や年齢、生活スタイルに応じて選択されます。大きく分けて保存療法と手術療法があります。

治療法 概要 適応例
骨盤底筋体操 筋力を強化し、軽度の症状改善を目指す 初期段階、若年層
ペッサリー療法 腟にシリコン製の器具を挿入して臓器を支える 手術が困難な高齢者・妊娠希望のある女性
手術療法 臓器を正しい位置に戻し固定する 中〜重度、QOLが著しく低下している場合

手術の種類について

  • 子宮摘出+腟形成術:脱出した臓器を除去または補正
  • メッシュ手術:メッシュ素材を使って骨盤を補強(TVM法など)
  • 腹腔鏡下手術:低侵襲で回復が早い(LSC法)

医師との十分な相談が大切です。症状の進行度・ライフスタイル・妊娠の希望などを考慮して選びましょう。

骨盤臓器脱に関するよくある質問(Q&A)

Q1. 骨盤臓器脱は自然に治りますか?
A1. 完全に自然治癒することはまれです。軽度なら体操や生活習慣改善で進行を防げますが、重度の場合は治療が必要です。
Q2. 手術後は再発しませんか?
A2. 術後の生活習慣や筋力低下によって再発するケースもあります。骨盤底筋体操を継続し、予防に努めましょう。
Q3. ペッサリーは痛くないの?
A3. 正しく装着すれば基本的に痛みはありません。ただし違和感があれば早めに医師に相談してください。
Q4. 出産後に発症しやすいのはなぜ?
A4. 分娩時に骨盤底筋が損傷しやすく、支持力が落ちるためです。特に吸引分娩や長時間分娩では注意が必要です。

まとめ:骨盤臓器脱は早期対処がカギ!

骨盤臓器脱は、年齢や出産を重ねた女性に多く見られますが、「恥ずかしい」「年だから仕方ない」と我慢する必要はありません。

体操やペッサリーによる対処、そして適切な手術選択によって、QOL(生活の質)を大きく改善することが可能です。

違和感を覚えたら、婦人科や泌尿器科の受診を検討しましょう。
そして、日頃から骨盤底筋を鍛え、予防にも努めてください。

💡ポイントまとめ:

  • 骨盤臓器脱は放置せず、早期対策を
  • 体操・生活習慣の見直しで進行を抑制
  • 症状が進行した場合は医師の診断と治療を
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