高次脳機能障害

高次脳機能障害は、交通事故や脳出血などの後遺症として現れることが多く、記憶や注意力、感情のコントロールなど、日常生活に大きな影響を及ぼします。本記事では、高次脳機能障害の症状、原因、リハビリ方法、家族や周囲の支援、受けられる公的制度について、わかりやすく解説します。

高次脳機能障害とは

高次脳機能障害とは、脳の損傷によって記憶・注意・判断・言語・感情などの高度な認知機能が低下する障害です。これは、脳出血、脳梗塞、交通事故、転倒などによる外傷性脳損傷が原因で発症します。

身体機能には大きな障害がないこともあり、外見では障害が分かりにくいため、「見えにくい障害」とも呼ばれています。

主な症状とその特徴

高次脳機能障害では、さまざまな認知機能の障害が現れます。以下の表に、代表的な症状と特徴をまとめました。

症状 具体的な特徴
記憶障害 最近の出来事を覚えられない、同じことを何度も聞く
注意障害 集中力が続かない、複数の作業が同時にできない
遂行機能障害 物事を計画通りに実行できない、段取りが悪い
社会的行動障害 感情のコントロールができない、怒りっぽくなる
失語症・失行症 言葉が出てこない、道具の使い方が分からなくなる

高次脳機能障害の原因

高次脳機能障害の原因となる主な脳の損傷は、以下のようなものがあります。

  • 脳外傷:交通事故、転倒、スポーツ中の頭部打撲など
  • 脳卒中:脳出血、脳梗塞、くも膜下出血
  • 低酸素脳症:心停止や溺水による酸素不足
  • 脳炎・脳腫瘍:感染や腫瘍による損傷

脳の損傷箇所や広がりによって、症状の出方や重症度は大きく異なります。

診断と評価方法

高次脳機能障害の診断には、専門の医療機関での評価が不可欠です。以下のような検査が行われます。

  • 神経心理学的検査(WAIS、WMS、CATなど)
  • 画像診断(MRI、CT)
  • 問診・日常観察(家族や支援者からの情報)

医師や臨床心理士、作業療法士などの多職種チームで、生活への影響を評価していきます。

リハビリと日常生活への対応

高次脳機能障害の回復にはリハビリが重要です。以下のような取り組みがあります。

  1. 作業療法(OT):日常生活動作の訓練、記憶支援
  2. 言語療法(ST):言語・コミュニケーション訓練
  3. 心理療法:感情コントロールやストレスへの対応
  4. 家族支援:接し方の工夫、共感的な関わり

また、メモやスマートフォンのリマインダーなどの補助ツールも有効です。

受けられる公的支援・福祉制度

高次脳機能障害のある方が利用できる支援制度は多岐にわたります。代表的なものを紹介します。

  • 障害者手帳(身体・精神):等級により税制・交通・医療の優遇
  • 自立支援医療:医療費の自己負担軽減
  • 就労支援:就労移行支援事業所やB型作業所など
  • 介護保険・障害福祉サービス:生活支援やデイケア利用

地域の障害者支援センターや社会福祉協議会に相談することで、必要な制度をスムーズに利用できます。

よくある質問(Q&A)

Q1:高次脳機能障害は完治しますか?
A1:完全に元通りになるのは難しいこともありますが、早期リハビリや支援によって生活能力を高めることは可能です。
Q2:見た目で分かりにくいため誤解されやすいのでは?
A2:その通りです。周囲の理解が重要であり、障害を「知ってもらう」ことが社会復帰の第一歩になります。
Q3:家族としてどんなサポートができますか?
A3:否定せずに話を聞き、できることに注目する姿勢が大切です。また支援者と連携しながら、無理なく共に暮らす工夫が求められます。

まとめ

高次脳機能障害は、目に見えにくく周囲に理解されにくい障害ですが、本人も家族も適切な支援と知識があれば、社会復帰や生活の質の向上が十分に可能です。

もし身近に同じような症状を持つ方がいる場合は、早めに専門医の診断を受け、必要な福祉制度や支援を活用することをおすすめします。

「理解すること」からすべてが始まります。

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