1. 高次脳機能障害におけるリハビリの種類と目的
高次脳機能障害のリハビリテーションは、損傷部位や症状に応じて専門職種が連携して行われます。単に機能を取り戻すだけでなく、社会生活に必要な技能の再習得に焦点を当てるのが特徴です。
| 職種・種類 | 主な目的と内容 | ターゲットとなる症状 |
| 認知リハビリテーション | 記憶力、注意集中力、問題解決能力といった高次脳機能そのものをトレーニングします。例えば、メモ帳やスマートフォンのリマインダー機能を使って記憶を代償する訓練も含まれます。 | 記憶障害、注意障害、遂行機能障害 |
| 作業療法 (OT) | 日常生活動作(ADL)や社会的役割の再獲得を目指します。料理、金銭管理、公共交通機関の利用など、複雑な作業を手順通りに行う練習を行います。 | 遂行機能障害、失行、失認 |
| 言語聴覚療法 (ST) | コミュニケーション能力(話す、聞く、読む、書く)の回復を支援します。言葉の理解や表出の困難(失語症)、会話のキャッチボールの訓練、嚥下障害への対応も行います。 | 失語症、発話障害、嚥下障害 |
| 心理・社会生活訓練 | 感情や行動のコントロール(易怒性、衝動性)や、無関心(アパシー)といった社会的行動障害に対応します。集団療法やSST(社会生活技能訓練)を通じて、対人スキルやストレス対処法を学びます。 | 社会的行動障害、感情障害 |
リハビリの重要な視点
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環境調整: リハビリと並行して、自宅や職場などでの環境を症状に合わせて整備し、失敗体験を減らす工夫(例:チェックリストの設置、騒音の除去)が非常に重要です。
2. 障害者手帳と支援制度の徹底ガイド
高次脳機能障害は、公的支援を受けることで、医療費や生活費、就労面での負担を軽減できます。
① 障害者手帳の種類
高次脳機能障害の場合、主に以下のいずれかの手帳の交付対象となります。
| 手帳の種類 | 対象となる症状 |
| 精神障害者保健福祉手帳 | 記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害など、認知・行動・精神面の障害が生活に支障をきたしている場合。 |
| 身体障害者手帳 | 失語症、構音障害、嚥下障害(内部障害)、または麻痺など、身体機能に重度の障害が残った場合。 |
【手帳取得のメリット】
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税金の控除、公共交通機関の割引。
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障害福祉サービス(後述)の利用申請に必要となる場合がある。
② 障害者総合支援法に基づく支援サービス
手帳の有無にかかわらず、高次脳機能障害と診断されれば、障害者総合支援法に基づく様々なサービスを利用できます。
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自立訓練(機能訓練・生活訓練):
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高次脳機能障害専門のリハビリ施設などで、認知機能の改善や日常生活能力の向上を目指した訓練を受けます。
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就労移行支援・就労継続支援:
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就労移行支援: 一般企業への就職を目指し、職業訓練や就職活動のサポートを受けます。
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就労継続支援(A型・B型): 一般企業での就労が難しい場合、雇用契約を結んで働く(A型)か、自分のペースで働く訓練(B型)をします。
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居宅介護・短期入所:
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自宅での生活援助や身体介護、介護者の休息(ショートステイ)のためのサービスです。
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③ 専門的な相談窓口
どこに相談すればいいか迷った場合は、まず専門的な窓口に連絡しましょう。
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高次脳機能障害者支援拠点(支援センター):各都道府県に設置されており、専門の相談員が高次脳機能障害に関するあらゆる相談に応じ、適切な医療機関や支援機関、福祉サービスへの橋渡しをしてくれます。
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地域包括支援センター/市区町村の福祉窓口:お住まいの地域の介護・福祉サービス全般について相談できます。
