はじめに:緑内障は「見えない進行」をする病気
緑内障は、眼圧(眼球の硬さ)などにより視神経が障害され、視野(見える範囲)が徐々に狭くなる病気です。一度失われた視野は元に戻らないため、早期発見・早期治療が、進行を止め、失明を防ぐための唯一の方法です。
しかし、緑内障の初期は、自覚症状がほとんどないか、あっても気づきにくいため、「見えない進行」をする危険な病気として知られています。
1. 緑内障の初期症状に気づくための「セルフチェック」
緑内障の症状は、通常、視野の周辺部から欠け始めるため、両眼で見ている状態では、脳が欠けた部分を補正してしまい、なかなか気づきません。
欠損が起こりやすい場所と見え方
- 視野の欠損:特に鼻側(中央から鼻より)の視野が欠け始めることが多いです。
- 見え方の変化:初期は、「なんとなく暗く感じる」「色が薄く見える」程度の変化です。
アムスラーチャートによるセルフチェック
片眼ずつチェックすることで、視野のわずかな異常に気づくことができます。
- アムスラーチャートを用意:方眼紙のような格子状の図(インターネットで検索可能)を用意します。
- 片眼を隠す:片方の眼を手で覆い、もう一方の眼だけで図の中央の点を見つめます。
- チェック項目:
- 線が途切れて見える部分はないか?
- 線が歪んで見える部分はないか?
- 暗く見えたり、モヤがかかって見える部分はないか?
【重要】 左右の眼を比較し、少しでも見え方に違いがあったり、線に歪みを感じたりした場合は、すぐに眼科を受診してください。
2. 40代が「失明を防ぐため」に眼科へ行くべきサイン
緑内障は、40歳以上の約20人に1人が罹患していると言われています。以下のサインがある場合は、症状がなくても検診を受けてください。
定期検診が必須のサイン
| サイン | 内容と理由 |
| ① 40歳を超えた | 日本緑内障学会では、40歳を過ぎたら年1回の定期検診を推奨しています。 |
| ② 家族に緑内障患者がいる | 遺伝的な要因が強く、家族歴がある場合は発症リスクが非常に高くなります。 |
| ③ 強い近視である | 強度の近視を持つ人は、視神経に負担がかかりやすく、緑内障を発症しやすいことが分かっています。 |
| ④ 高い眼圧を指摘されたことがある | 過去の健康診断などで「眼圧が高い」と言われたことがある場合は、継続的な経過観察が必要です。 |
症状が出た場合の緊急サイン
- 眼の痛み・頭痛:急激に眼圧が上昇する「急性緑内障発作」の可能性があります。吐き気や嘔吐を伴うこともあり、放置すると短期間で失明に至る危険な状態です。この場合は救急で眼科を受診してください。
- 視界の急激な変化:視野が急に狭くなった、視界の一部が暗くなったと感じた場合。
3. 早期発見のための眼科検
緑内障の発見には、以下の専門的な検査が必要です。
- 眼圧検査:眼の硬さを測定します。
- 眼底検査:視神経の状態を直接観察し、視神経のへこみ(陥凹拡大)がないかを確認します。
- 視野検査:見える範囲と感度を調べ、視野の欠損の有無を測定します。
- OCT検査:光干渉断層計により、視神経線維の厚さなどを精密に測定します。
これらの検査が可能な眼科専門医で、定期的に検診を受けることが、緑内障による失明を防ぐ最も確実な対策となります。
