ばね指の治療は、初期から中等度の段階であれば、手術をせずに炎症を抑える保存療法で改善することが十分に可能です。治療は、症状の進行度と、炎症の程度に応じて使い分けられます。
1. ばね指の進行度別 治療法の選択肢
| 進行度 | 症状の目安 | 優先される治療法(手術なし) |
| 初期(軽度) | 指の付け根に痛み・圧痛がある。引っかかりはなし。 | 安静、テーピング、消炎鎮痛剤(内服・湿布)、ストレッチ |
| 中期(中等度) | 曲げ伸ばし時に「カクッ」と引っかかる(ばね現象)。自力で伸ばせる。 | 腱鞘内ステロイド注射(最も有効)、上記保存療法 |
| 重度 | 指が曲がったまま自力で戻せない。強い痛みと引っかかり。 | ステロイド注射(効果が薄い場合も)、手術が検討される |
2. 最も有効な治療法:腱鞘内ステロイド注射
保存療法の中で、特に中等度のばね指に対して即効性と高い有効性が期待できるのが、この注射療法です。
| 治療法 | 内容と効果 | 注意点 |
| ステロイド注射 | 炎症を起こしている腱鞘内に、抗炎症作用の強いステロイド剤と局所麻酔薬を直接注入する。 | 根治ではない。効果が切れると再発することがある。注射の頻度には制限があり、繰り返すと腱を弱めるリスクがある(糖尿病の方は特に注意)。 |
| 成功率 | 1回の注射で70~80%程度の患者で症状が改善または消失するとされる。 |
3. 自宅でできる補助療法:テーピングとストレッチ
テーピングとストレッチは、炎症を悪化させないよう、指の負担を軽減し、柔軟性を保つための補助的な役割を果たします。
① テーピング(固定)
- 目的:指の過度な曲げ伸ばしや使いすぎを制限し、患部を安静に保つ。特に就寝時に指が曲がるのを防ぐために有効。
- 方法:伸縮性のあるテープ(幅2〜3cm推奨)を使い、指の動きを制限するように付け根から手首に向けて固定する。痛む指を隣の指に添えるように固定する「バディテーピング」も有効。
② ストレッチ・マッサージ
患部の炎症が強い時期に、強いマッサージやもみほぐしを行うと、炎症が悪化するリスクがあります。
- 推奨される方法(専門家の指導のもと):
- 軽いストレッチ:痛みのない範囲で、指をゆっくりと手の甲側へ反らす動作を行い、腱の柔軟性を保つ。
- 患部周辺のマッサージ:炎症のない前腕の筋肉や手のひらの皮膚を軽く動かす程度のマッサージは、血行改善や筋膜の滑りを良くする効果が期待できる場合がある。
- 注意:痛みが強い時期や、腱鞘の患部(付け根の硬い部分)を強く押したり、もんだりすることは避けてください。
4. 手術が検討される場合
以下の状況では、保存療法では効果が薄いため、手術(腱鞘切開術)が検討されます。
- 注射の効果が数ヶ月で切れて再発を繰り返す場合。
- 重度で、指が曲がったまま自力で戻せず、日常生活に大きな支障をきたしている場合。
- 糖尿病など、ステロイド注射の副作用リスクが高い基礎疾患を持つ方。
ばね指の治療は、安静による炎症の鎮静が基本です。自己判断せず、まずは整形外科医に診断を受け、進行度に応じた適切な治療方針を相談してください。
