1. なぜ膵臓がんは「沈黙のサイン」を見逃しやすいのか
膵臓は体の奥、胃の裏側(背中側)に位置しており、初期段階では腫瘍が周囲の臓器を圧迫しにくいため、自覚症状がほとんど出ません。症状が現れたときには、すでに進行しているケースが多く、早期発見が極めて難しい「難治がん」の一つです。
しかし、進行の過程で現れる以下の非特異的な(他の病気と区別しにくい)サインを見逃さないことが重要です。
2. 膵臓がんの初期症状として特に注意すべき3つのサイン
症状が現れるかどうかは、がんが膵臓のどの部位(膵頭部、膵体部、膵尾部)にできたかによって異なります。
サイン①:原因不明の「背中の痛み」
- 特徴:みぞおちから背中にかけて起こる、鈍い痛みや重い違和感。膵臓がんでは、がんが膵臓の周囲にある神経に浸潤することで痛みが生じます。
- 見分け方:
- 姿勢による変化:体を前かがみにしたり、横になって丸まったりすると、痛みが軽減することがあります。
- 食事との関連:食後に痛みが強くなることがありますが、胃薬を飲んでも改善しないことが多いです。
サイン②:進行性の「黄疸(おうだん)」
- 特徴:皮膚や眼の白目の部分が黄色くなる症状。
- メカニズム:膵臓の膵頭部にがんができると、胆管を圧迫・閉塞させます。胆汁が流れなくなり、血液中に逆流することで黄疸が生じます。
- 特徴的な症状:黄疸に伴い、尿の色が濃い茶色(コーラ色)になり、便の色が白っぽくなることがあります。
サイン③:急速な「体重減少」と「食欲不振」
- 特徴:食事の量が変わらない、または減っていないのに、数ヶ月で急激に体重が減る。
- メカニズム:がん細胞が大量のエネルギーを消費すること、また、膵臓から分泌される消化酵素の働きが低下し、消化吸収機能が落ちることが原因です。
3. 受診すべき判断基準:医療機関へ行くべきサイン
以下の症状が複数、または持続的に現れた場合、膵臓がんを含めた重篤な疾患の可能性を考慮し、すぐに医療機関を受診してください。
| 受診の判断基準 | 症状の例 |
| 持続性の痛み | 背中やみぞおちの鈍い痛みが、数週間以上続き、市販薬や胃薬で改善しない。 |
| 黄疸の出現 | 目の白目や皮膚が黄色いと感じた場合、または尿の色が濃くなった。 |
| 急激な体重減少 | 原因不明で、数ヶ月で体重が5%以上減少した(例:60kgの人が3kg以上減った)。 |
| 糖尿病の急な悪化・発症 | 糖尿病の既往がないのに急に発症した、または糖尿病の治療中でも急に血糖コントロールが悪化した。 |
相談すべき専門医
これらの症状が見られた場合、まずは消化器内科を受診してください。血液検査(アミラーゼ、リパーゼ、腫瘍マーカーなど)や画像検査(腹部超音波、CT、MRIなど)による精密検査が必要です。
膵臓がんの早期発見には、リスクの高い方(慢性膵炎、糖尿病、家族歴など)の定期的な精密画像検査(超音波内視鏡など)が最も重要です。

