1. 大人のASD(旧アスペルガー症候群)とは?
ASD(自閉スペクトラム症)は、生まれつきの脳機能の違いによる発達障害の一つで、「対人関係やコミュニケーションの困難さ」と「限定された興味やこだわり」を主な特性とします。大人になってから、仕事や人間関係で大きな困難に直面し、初めて診断に至るケースが増えています。
2. 大人のASDに現れやすい10の特徴とセルフチェック
以下の10項目は、ASDの特性が成人後の社会生活や人間関係にどのように現れるかを示しています。
【対人関係・コミュニケーションの困難】
- 場の空気を読むことが苦手で、悪気なく不適切な発言をしてしまう。
- 冗談や皮肉、比喩表現などの裏にある意図を理解することが難しい。
- 相手の表情や声のトーンから感情を読み取ることが苦手で、誤解されやすい。
- 自分の話したいことや専門的な話題を一方的に話し続け、相手が関心を持っているか気にしない。
- アイコンタクトが苦手で、目線が定まらない、または凝視しすぎてしまう。
【限定された興味・こだわり・感覚特性】
- 特定の趣味や知識分野に「過集中」し、仕事や生活に支障が出るほど夢中になってしまう。
- 急な予定変更や予想外の出来事に対し、極端に強い不安やパニックを感じる。
- 自分なりのルールや手順に強くこだわり、他人や状況に合わせて変えることが難しい。
- 聴覚、触覚、視覚などの感覚が過敏、あるいは鈍感で、特定の音や感触(例:服のタグ)が耐えられないほど苦痛に感じる。
- 抽象的な指示が苦手で、「あれ」「これ」ではなく、「〇〇を〇〇の場所に持ってきて」のように具体的に指示されないと動けない。
注意 上記に多く当てはまるからといって、すべてがASDであるわけではありません。しかし、これらの特性によって「日常生活や社会生活に支障が出ている」場合は、専門機関への相談を検討するサインです。
3. 人間関係の悩みを解消する具体的な対処法
ASDの特性は治るものではありませんが、特性を理解し、環境や行動パターンを調整することで、人間関係のトラブルを減らし、生きづらさを解消できます。
対処法①:コミュニケーションの「マニュアル化」
- 非言語サインの学習:映画やドラマの人物の表情、声のトーンと、その時の感情をセットで観察・学習し、「非言語サインのデータベース」を意識的に頭の中で構築する。
- 質問の意図の確認:「どういう意味ですか?」と正直に尋ねる勇気を持つ。曖昧な表現で推測せず、具体的な情報を求めることで、誤解を防げます。
対処法②:職場の「外部化」と「視覚化」
- 関心の限定の活用:自分の得意な分野や過集中できる特性を活かせる職種や業務に重点を置く。
- ルールの視覚化:口頭での指示や曖昧なルールを、必ずメモやリストにして視覚化し、机の上や手帳など目につく場所に貼っておく。
対処法③:物理的な「感覚の調整」
- 逃げ場の確保:感覚過敏(特に音)によるストレスが強い場合は、休憩時間などに静かな場所へ移動する、ノイズキャンセリングイヤホンを使うなどの対策を事前に決めておく。
- 苦手な素材の排除:肌触りや着心地が悪いと感じる衣服は無理に着ず、快適な素材を選ぶなど、感覚的なストレスを日常から減らす。
専門的な相談窓口
特性による困りごとが継続し、仕事や日常生活に支障が出ている場合は、以下の専門機関に相談してください。
- 精神科・心療内科:発達障害専門外来で正確な診断を受ける。
- 発達障害者支援センター:就労や日常生活の具体的な支援計画について相談する。
