悪性リンパ腫は、白血球の一種であるリンパ球ががん化する血液のがんです。初期症状が風邪や他の感染症と似ているため見過ごされやすく、「首のしこり」は最も気づきやすいサインの一つです。
1. 悪性リンパ腫の初期症状とB症状
悪性リンパ腫の代表的な症状は、がん化したリンパ球が増殖してリンパ節が腫れる「リンパ節の腫れ」と、全身の代謝異常による「B症状」です。
① リンパ節の腫れ(しこり)
- 特徴: 首(特に鎖骨の上)、脇の下、足の付け根(鼠径部)などにあるリンパ節が腫れます。
- サイン: 通常、痛みを伴わない硬いしこりとして触れ、数週間経っても自然に小さくならないのが特徴です。
② B症状(全身症状)
B症状は、がんが原因で起こる全身の炎症や代謝亢進を示すもので、診断基準の一つにもなります。
- 不明熱: 38℃以上の発熱が原因不明で続く。
- 体重減少: 6ヶ月以内に原因不明で、体重が10%以上減少する。
- 寝汗: 夜間に下着や寝具がびっしょり濡れるほどの大量の寝汗。
2. ホジキン病(HL)と非ホジキンリンパ腫(NHL)の比較
悪性リンパ腫は、組織型によって大きく2つに分けられ、それぞれ特徴と治療の予後が異なります。日本の悪性リンパ腫の約9割は非ホジキンリンパ腫です。
| 特徴 | ホジキン病(HL) | 非ホジキンリンパ腫(NHL) |
| 主な発生年齢 | 比較的若年層(20代〜30代)と高齢者。 | 高齢者(60代以降)に多い。 |
| 広がり方 | リンパ節からリンパ節へと隣接して規則的に広がることが多い。 | 体内のリンパ節やリンパ組織以外の臓器にも不規則に広がる(胃、腸、皮膚、脳など)。 |
| 治療の予後 | 適切な治療で治癒率が高い(特に若年者)。 | 組織型により様々(進行の遅いタイプから速いタイプまで)。 |
| 5年相対生存率(目安) | 進行度にもよるが、約80〜90%と比較的高い。 | 組織型と進行度により大きく異なり、約60〜70%程度。 |
3. 専門医へ行くべき判断基準
リンパ節の腫れは、風邪や虫歯、扁桃炎でも起こりますが、以下のサインに当てはまる場合は、血液内科または内科を受診し、精密検査を受けてください。
- しこりが2cm以上あり、触っても痛みがなく、硬い。
- しこりが2週間以上経っても小さくならない、または徐々に大きくなっている。
- しこりに加えて、B症状(発熱、寝汗、体重減少)を伴っている。
悪性リンパ腫は、化学療法(抗がん剤)や分子標的薬の進歩により、治癒率が大きく向上しているがんです。早期発見と組織型に合わせた正確な治療開始が非常に重要です。
