悪性リンパ腫の治療法を医師が解説!化学療法から最新の分子標的薬まで

悪性リンパ腫の治療は、その組織型(ホジキン病か非ホジキンリンパ腫か)悪性度(進行の速さ)、そして進行ステージによって選択されます。近年、分子標的薬や免疫療法の進化により、治療成績は飛躍的に向上しています。

1. 治療の基盤:化学療法(抗がん剤治療)

多くの悪性リンパ腫で中心となる治療法は、複数の抗がん剤を組み合わせる多剤併用療法です。

R-CHOP療法

非ホジキンリンパ腫の中でも最も多い「びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)」の標準治療です。

  • 内容: リツキシマブ(分子標的薬)と4種類の抗がん剤(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾロン)を組み合わせる。
  • 副作用: 骨髄抑制(白血球減少による感染リスク)、脱毛、吐き気、末梢神経障害(手足のしびれ)など。

その他の化学療法

  • ABVD療法: 主にホジキン病の標準治療として用いられます。

2. 進化する治療:分子標的薬と免疫療法

従来の抗がん剤が全てのがん細胞や正常細胞に作用するのに対し、これらはがん細胞特有の分子や働きを標的とします。

① 分子標的薬(リツキシマブなど)

  • 作用: 特定のタイプのリンパ腫細胞の表面にあるタンパク質(例:B細胞のCD20)を狙い撃ちにし、攻撃します。
  • メリット: 従来の抗がん剤に比べ、正常な細胞への影響が少なく、治療効果と生存率を大きく向上させました。R-CHOP療法のRはこの分子標的薬です。

② 免疫チェックポイント阻害薬

  • 作用: 患者さん自身の免疫細胞(T細胞)が、がん細胞への攻撃を妨げられないよう、ブレーキを外すことで免疫の力を活性化させます。
  • 適応: ホジキン病や一部の非ホジキンリンパ腫などで、再発・難治性のケースを中心に適用が広がっています。

③ CAR-T細胞療法(最新治療)

  • 作用: 患者さん自身のT細胞を採取し、体外で遺伝子操作を加えてがん細胞を攻撃する能力を高めた後、体内に戻す高度な細胞療法
  • 適応: 難治性または再発性のDLBCLなどで、従来の治療が効かないケースの切り札として期待されています。

3. 治療後の生活と再発・二次がんのリスク

治療が成功し、がんが消失(完全寛解)した後も、長期的な経過観察と生活習慣の管理が重要です。

副作用への長期的な対処

  • 末梢神経障害: 化学療法や分子標的薬によって手足のしびれが残ることがあります。リハビリや薬物療法で症状の軽減を目指します。
  • 心毒性: ドキソルビシンなどの薬剤は心臓に負担をかけるため、治療後も定期的な心機能チェックが必要です。

治療後の生活と注意点

  • 感染予防: 特に化学療法の後は免疫力が低下しているため、感染症(インフルエンザ、肺炎など)の予防接種や手洗いの徹底が重要です。
  • 定期的なフォローアップ: 悪性リンパ腫は再発する可能性があるため、治療後5年間は特に厳重な経過観察が必要です。
  • 二次がんリスク: 治療の影響で、将来的に別のがん(二次がん)や骨髄異形成症候群などを発症するリスクがわずかながらあるため、長期的な健康管理と検診が不可欠です。

悪性リンパ腫の治療は個別化が進んでいます。担当の血液内科医と症状、リスク、生活背景を詳細に共有し、最も適した治療計画を立てることが、長期の予後改善に繋がります。