1. 「胸焼け・喉の違和感」が示す病態
「胸焼け」や「喉の違和感(ヒリヒリ、つかえ感)」は、多くの場合、胃酸が食道や喉まで逆流することによって起こる逆流性食道炎(Gerd)の典型的なサインです。
| 症状のタイプ | 特徴 | 関連する病態 |
| 典型的な症状 | 胸焼け(みぞおちから胸骨にかけての灼熱感)、呑酸(すっぱい液体や苦いものが口まで上がってくる感覚)。 | 逆流性食道炎 |
| 非典型的な症状 | 喉の違和感(イガイガ、つかえ、声枯れ)、慢性の咳、喘息のような症状。 | 非びらん性胃食道逆流症(NERD)や喉頭咽頭逆流症(LPRD) |
2. 逆流性食道炎の主な原因:ストレスとピロリ菌の関係
逆流性食道炎は胃酸の量だけでなく、胃酸を食い止める機能(下部食道括約筋)の異常が複合的に関与して発生します。
原因①:生活習慣と「ストレス」(最も多い)
ストレスは、逆流性食道炎の最も一般的な誘発・悪化要因の一つです。
- 自律神経の乱れ: ストレスにより自律神経が乱れると、食道と胃の境目にある下部食道括約筋(LES)が緩みやすくなり、胃酸が逆流しやすくなります。
- 胃の運動機能低下: 胃の動きが悪くなり、食べたものが胃に長く留まることで、逆流の機会が増えます。
- 知覚過敏: ストレスによって、食道の粘膜が胃酸に対して過敏になり、少しの逆流でも強い痛みや不快感を感じやすくなります。
原因②:ピロリ菌除菌後の胃酸変化
ピロリ菌は胃の粘膜を荒らし、胃酸の分泌を抑える働きも持つことがあります。
- 除菌後のリスク: ピロリ菌を除菌すると、胃酸の分泌能力が回復し、以前より胃酸が多くなることがあります。
- 結論: ピロリ菌の感染自体が逆流性食道炎の直接的な原因になることは少ないですが、除菌後に症状が出現・悪化するケースがあるため、関連性が指摘されています。
3. 市販薬で治せる判断基準と専門医への相談目安
市販薬は症状を一時的に抑えるのに有効ですが、重篤な疾患や食道がんのリスクを見逃さないために、自己判断には限界があります。
市販薬で「様子を見てよい」判断基準
- 症状の頻度と軽さ: 週に1~2回程度の軽度の胸焼けや呑酸であり、食生活や体勢を変えるとすぐに治まる。
- 期間: 症状が始まってから1~2週間以内である。
- 使用する薬: H2ブロッカー(ガスターなど)や胃酸を中和する制酸剤を試してみて、すぐに効果が得られる場合。
専門医(消化器内科)へ行くべき基準
以下の症状が見られたら、市販薬に頼らず、すぐに専門医を受診してください。
- 市販薬が効かない・効果が持続しない: 2週間以上市販薬を服用しても症状が改善しない場合。
- 症状が長期化している: 症状が1ヶ月以上続いている。
- 警告サイン(危険な症状)がある:
- 体重減少:原因不明の体重減少がある。
- 嚥下困難:食べ物や飲み物が飲み込みにくい、つかえる感じがある。
- 吐血や黒い便:消化管からの出血が疑われる場合。
- 激しい痛み:胸痛が背中まで広がるなど、狭心症を疑う痛みがある場合。
医師の視点
長期間の逆流性食道炎は、食道の粘膜が胃の粘膜のように変化する**「バレット食道」を引き起こす可能性があり、これは食道がんのリスク因子**です。そのため、症状が慢性化している場合は、内視鏡検査(胃カメラ)を受けて、食道の状態を直接確認することが重要です。
