心筋梗塞の最大の原因は、血管の動脈硬化です。動脈硬化を加速させる高血圧、脂質異常症、糖尿病といった生活習慣病をコントロールすることが、予防の鍵となります。
1. 薬なしで血圧と脂質を改善する3つの柱
薬物療法が必要となる前に、まずは生活習慣を見直すことが、心筋梗塞予防の最も基本的な、そして強力な対策です。
① 減塩(高血圧対策の最重要項目)
塩分の過剰摂取は、血圧を上げる最大の要因です。
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目標: 日本人の目標塩分摂取量は1日6g未満です。
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対策:
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加工食品を避ける: 練り物、漬物、インスタント食品、加工肉(ハム・ソーセージ)の摂取を減らす。
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調味料は計量する: 醤油やソースは直接かけず、小皿に出して少量つける。
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出汁を活用: 旨味の強い出汁(昆布、カツオ、干し椎茸)を使い、塩味への依存度を下げる。
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② 適度な運動(高血圧・脂質異常症の対策)
運動は血圧を下げ、悪玉コレステロール(LDL)を下げ、善玉コレステロール(HDL)を増やす効果があります。
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推奨: 中強度の有酸素運動(早歩き、軽いジョギング、水泳など)を毎日30分以上、または週に150分以上行う。
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ポイント: 運動の強度は、「軽く息が弾み、汗ばむ程度」を目安にし、継続することが最も重要です。
③ 禁煙と節酒
喫煙は血管を収縮させ、動脈硬化を直接進行させるため、心筋梗塞の最大の危険因子です。
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喫煙: 完全禁煙が必須です。受動喫煙も避けてください。
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飲酒: アルコールは少量ならHDLコレステロールを上げる効果も期待されますが、過度な飲酒は高血圧や中性脂肪増加の原因となります。適量を厳守しましょう(日本酒1合/ビール中瓶1本/ワイン2杯程度まで)。
2. 心臓を守るための食生活の変え方(脂質・血糖対策)
「何を食べるか」だけでなく、「どう食べるか」も重要です。心臓病予防に効果的な食事パターン(地中海食、DASH食など)を参考にしましょう。
対策①:良質な脂質の選択(LDLコレステロール対策)
悪玉コレステロール(LDL)を上げる飽和脂肪酸やトランス脂肪酸を避け、心臓に良い不飽和脂肪酸を選びます。
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カット: バター、ラード、生クリーム、肉の脂身、加工食品に含まれる硬化油(ショートニングなど)を大幅に減らす。
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積極摂取: 青魚(サバ、イワシ、サンマなど)に豊富に含まれるオメガ3系脂肪酸(EPA・DHA)は、血液をサラサラにし、中性脂肪を下げる効果があるため、週に2~3回は積極的に摂る。
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油の切り替え: 料理に使う油をオリーブオイルや菜種油などの不飽和脂肪酸に切り替える。
対策②:野菜・果物・全粒穀物の積極摂取
食物繊維は、腸内で余分な脂質や糖の吸収を穏やかにし、血圧を下げるミネラル(カリウム)を補給します。
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野菜・果物: 毎食、野菜をたっぷり摂り、カリウム摂取を増やす(ただし、腎臓病がある場合は医師の指示に従う)。
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主食の変更: 白米や精製されたパンを、玄米、全粒粉パン、そば、大麦などの全粒穀物に置き換える。
対策③:ゆっくり食べる(血糖・中性脂肪対策)
早食いは血糖値を急激に上げ、肥満や脂質異常症を悪化させます。
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実践: 一口30回を目安によく噛み、食事時間を20分以上かけることを意識しましょう。
これらの生活習慣の改善は、心筋梗塞だけでなく、糖尿病や脳卒中など様々な生活習慣病の予防にも繋がる「最強の予防策」です。
