【血液内科医監修】白血病の初期症状チェックリスト:疲れやあざで気づく危険なサインと診断の流れ

白血病は「血液のがん」と呼ばれ、骨髄で異常な白血球(白血病細胞)が無制限に増殖することで、正常な血液細胞(赤血球、白血球、血小板)が作られなくなる病気です。初期症状は風邪や貧血とよく似ており、見過ごされがちですが、早期発見と速やかな治療開始が予後を大きく左右します。

1. 白血病の初期症状:疲れやあざで見逃されやすいサイン

白血病の初期症状は、正常な血液細胞が減少することによって引き起こされます。症状はゆっくりと進行することが多いため、以下のチェックリストでご自身の体調の変化を確認しましょう。

1.1 正常な赤血球減少によるサイン(貧血症状)

赤血球は酸素を運ぶ役割を担っています。これが減少すると、体全体が酸欠状態となり、疲労やだるさを感じます。

  • 強い疲労感や倦怠感が続く。

  • 体を休めても疲れが取れない。

  • 階段の上り下りや少しの運動で動悸や息切れがする。

  • 顔色が青白い、まぶたの裏側が白い。

  • めまいや立ちくらみが頻繁に起こる。

1.2 正常な血小板減少によるサイン(出血傾向)

血小板は血液を固める役割を担っています。これが減少すると、出血しやすくなったり、血が止まりにくくなったりします。

  • ぶつけた覚えがないのに、**あざ(紫斑)**が体のあちこちにできる。

  • 鼻血や歯ぐきからの出血が頻繁にあり、なかなか止まらない。

  • 生理の際の出血量が増える(過多月経)。

  • 小さな点状の出血(点状出血)が皮膚に出る。

1.3 正常な白血球減少と異常細胞増加によるサイン(感染・発熱)

白血球は体を守る免疫の役割を担っています。正常な白血球が減ると免疫力が低下し、白血病細胞が増殖すると全身に炎症反応が起こります。

  • 原因不明の発熱が続く(38℃以上の高熱)。

  • 風邪や感染症にかかりやすく、治りにくい。

  • 扁桃腺炎や歯肉炎などが治りにくく、炎症が続く。

1.4 その他の見過ごされやすいサイン

  • リンパ節の腫れ(特に首、脇の下、足の付け根)。

  • お腹の張りや違和感(脾臓や肝臓に白血病細胞が浸潤している可能性)。

  • 体重の減少(食欲不振や代謝亢進による)。

2. 急性白血病と慢性白血病:発症のパターン

白血病は進行の速さによって「急性」と「慢性」に分けられ、初期症状の現れ方が異なります。

2.1 急性白血病(ALL, AML)

急性白血病は異常細胞の増殖が速く、数日〜数週間で急速に症状が進行します。

  • 突然の強い発熱や喉の痛み。

  • 急激な貧血や激しい倦怠感。

  • 全身の倦怠感が強く、起き上がれないほどになる。

この場合、症状の進行が早いため、風邪薬などで対処せず、速やかに医療機関を受診する必要があります。

2.2 慢性白血病(CLL, CML)

慢性白血病は異常細胞の増殖が比較的緩やかで、初期にはほとんど自覚症状がないことが特徴です。

  • 健康診断の血液検査で、白血球の異常な増加を指摘されて初めて見つかることが多い。

  • 軽度の疲労感、体重減少、寝汗といった非特異的な症状が数ヶ月続くことがある。

3. 病院へ行くべき判断基準と診断の流れ

白血病の症状は、一般的な貧血や感染症、他の血液疾患でも起こり得るため、自己判断は禁物です。

3.1 病院へ行く判断基準

以下のいずれかに当てはまる場合は、速やかに医療機関を受診してください。

  1. 上記の初期症状(特に貧血、発熱、出血傾向)が複合的に現れている場合。

  2. 症状が通常の風邪薬などで改善せず、1週間以上続く場合。

  3. 健康診断などで**血液検査の結果に明らかな異常(白血球の異常増減、貧血、血小板減少など)**を指摘された場合。

3.2 診断の流れ(血液内科)

白血病が疑われる場合、専門である血液内科で以下の精密検査が行われます。

  1. 血液検査:血球の数(白血球、赤血球、血小板)や、異常な白血病細胞が存在するかどうかを確認します。この段階で白血病の疑いが強まります。

  2. 骨髄検査(骨髄穿刺・骨髄生検):白血病の診断を確定するために必須の検査です。腰の骨などから骨髄液や組織を採取し、異常な細胞の種類や割合、遺伝子異常などを詳しく調べます。

  3. 画像検査:胸部X線やCT検査などで、リンパ節の腫れや臓器への浸潤の有無を確認します。

白血病は種類によって治療法が大きく異なります。骨髄検査で正確な診断を下し、それぞれのタイプに応じた適切な治療(化学療法、分子標的薬、造血幹細胞移植など)を早期に開始することが、患者さんの予後を向上させるために最も重要なプロセスとなります。症状に気づいた場合は、ためらわずに専門医の診察を受けてください。