虚血性大腸炎は、大腸の血管の血流が悪くなることで、大腸の粘膜に炎症や潰瘍が生じる病気です。突然の腹痛や血便で発症しますが、適切な生活管理を行わないと再発しやすい特徴があります。特に血管の柔軟性が低下している高齢者や、腸に負担がかかりやすい便秘がちの人は、徹底した予防策が必要です。
虚血性大腸炎の主な原因と再発メカニズム
虚血性大腸炎の主な原因は、一時的な大腸への血流障害です。再発を招く要因には以下のようなものがあります。
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脱水と低血圧: 高齢者や夏場は脱水になりやすく、血圧が低下すると、大腸への血流が十分に行き渡らなくなります。
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便秘と排便時の負担: 便秘により便が硬くなると、排便時に腹圧が過度にかかり、これが大腸の血管を圧迫して血流を妨げます。また、便が溜まることで大腸の内圧が上昇することも血流障害の原因となります。
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基礎疾患: 高血圧、脂質異常症、糖尿病などの動脈硬化を進行させる疾患があると、血管が詰まりやすくなり、再発リスクが高まります。
食事の予防策:再発期と安定期の違い
食事は、腸への負担を減らし、便通を整える上で最も重要な対策です。
1. 再発直後(急性期)の食事
症状が治まりきらない再発直後は、大腸の炎症を悪化させないよう、腸を休ませることが最優先です。
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絶食と流動食: 医師の指示に従い、まずは絶食や点滴で腸を完全に休ませます。回復してきたら、おもゆ、具なしのスープ、重湯など、消化の良い流動食から徐々に開始します。
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低残渣食の徹底: 食物繊維の多い食品は、大腸の負担になるため避けます。具体的には、海藻類、きのこ類、未精製の穀物、種実類、硬い野菜などは一時的に控えます。
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温度と刺激: 冷たい飲み物や熱すぎる飲み物、香辛料などの刺激物は、腸のぜん動運動を刺激しすぎるため避けます。
2. 安定期・再発予防のための食事
症状が落ち着いた安定期は、便通を整え、脱水を防ぎ、血管を健康に保つ食事を心がけます。
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水分補給の徹底: 腸への血流を保つため、のどの渇きを感じる前にこまめに水分(水、麦茶など)を補給します。特に高齢者は喉の渇きを感じにくいため、意識的な摂取が必要です。
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良質な食物繊維の摂取: 便秘予防のため、徐々に食物繊維を増やしますが、**不溶性食物繊維(硬い野菜や穀物)よりも水溶性食物繊維(海藻類、里芋、果物の一部)**を優先します。水溶性食物繊維は便を柔らかくし、排便時の負担を軽減します。
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高血圧予防: 塩分(ナトリウム)を控え、カリウムを多く含む食品(野菜、果物)を積極的に摂ることで血圧をコントロールし、血管への負担を減らします。
生活習慣の予防策:便秘と血管への負担軽減
特に高齢者と便秘がちな人は、以下の生活習慣を徹底することが再発予防に直結します。
1. 便秘対策(腸への負担軽減)
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排便習慣の確立: 毎朝決まった時間にトイレに行くなど、排便リズムを作ります。朝食後にリラックスしてトイレに行く習慣が理想的です。
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適度な運動: 腹筋力や腸のぜん動運動を助けるため、無理のない範囲でウォーキングや腹筋運動を行います。
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便意の我慢禁止: 便意を感じたらすぐにトイレに行き、便を溜め込まないようにします。
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薬剤の活用: 食事や運動で改善しない慢性的な便秘は、医師に相談し、**緩下剤(便を柔らかくする薬)**を適切に使用して、硬い便を避けます。排便時の過度な腹圧を避けることが、血管の圧迫予防に繋がります。
2. 血管・血流対策(高齢者向け)
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体温管理と保温: 体が冷えると血管が収縮し、血流が悪くなります。特に寒い季節は、腹部や下肢を温かく保つように心がけます。
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基礎疾患の管理: 高血圧、糖尿病、脂質異常症の治療を継続し、動脈硬化の進行を食い止めます。内服薬は自己判断で中止せず、定期的な検査で数値を安定させます。
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急激な体位変換の回避: 高齢者は立ち上がる際などに急激に血圧が下がりやすいため(起立性低血圧)、ゆっくりと立ち上がり、血流の急激な変化を防ぎます。
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ストレス管理: 過度なストレスは自律神経の乱れを通じて血管を収縮させるため、趣味やリラックスできる時間を作り、心身の緊張を和らげることも重要です。
病院へ行くべき判断基準
虚血性大腸炎は再発を繰り返すと、大腸が狭くなる狭窄や重篤な壊死に繋がるリスクがあります。
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血便・粘血便が出た時: 少量であっても血便が出た場合は、再燃のサインである可能性が高いです。
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激しい腹痛(特に左下腹部): 再発直後のような激しい痛みが現れた場合は、すぐに医療機関を受診します。
再発予防は、腸への優しさと血管への配慮のバランスが重要です。医師や管理栄養士と相談しながら、個々の状態に合わせた最適な生活習慣を確立し、再発リスクを最小限に抑えましょう。
